少しずつ強くなっていく選手達を見ていると、何だか心が躍るような感覚に陥ってくる。それはきっと、あの人から教わった感覚だとも思ってる。
だからかもしれないが、わたしは毎日毎日飽きもせずにイナズマジャパンの練習を見に行くことを日課としていた。

「…あ!紗玖夜さん!」
「こんにちは、円堂くん。相変わらず元気みたいね。」
「はい!…おーい、皆ー!」

今日も今日とて元気な円堂くんに挨拶されて、それに笑顔で応じると、円堂くんの大きな声につられたのか他のイナズマジャパンの選手たちがわらわらと集まってきた。
皆が皆、汗をかいていて暑そうだ。…まあ当然か。あの人の容赦ない特訓のあとなら、この位の汗は当たり前だろう。

「こんにちは、紗玖夜さん。」
「こんにちは、鬼道くん。今日も冴えてるわね、君のプレー。」
「有難うございます。そう言っていただけると光栄です。」
「ねえねえ紗玖夜さん!俺のプレーも見ててくれた!?」
「ちゃんと見てたわ、緑川くん。頑張るのもいいけど、ちゃんと休憩はするのよ?」
「えー!俺頑張ってるから褒めてよー!」

行儀良く挨拶してくる鬼道くんを褒めれば僅かに頬を赤く染め、わたしの気をひこうと話しかけてきた緑川くんを少し笑って諌めれば頬を膨らませる素振りを見せる。
自分にこんな時代があったなんて、少し信じられない。…やっぱり、可愛いなぁ。

わたしの持ってきた差し入れを取り合うように群がる選手たちを見つめてにこにこ笑っていたら、ふと視線を感じて合宿所の扉を見てみたら。

「…あらあら。」

とある人物と眼があった瞬間、その人はぷいっと目線を反らして部屋に行ってしまった。…やれやれ、あの人の方が選手たちよりも子供かもしれないわ。

***

「拗ねてるの?…道也さん。」
「…別に。」

緑色の背中に声をかければ、やっぱり拗ねたような声が返ってきた。普通の人…イナズマジャパンの子なら絶対に分からないだろうけど、この声は絶対拗ねてる。
…分かりやすい上に子供よりも子供っぽい。相変わらず可愛い人。

「もう…子供に嫉妬すること無いじゃない?」
「嫉妬などしていない。」
「またそんな事言って…。」

苦笑しつつも未だにこちらに背中を向けているイナズマジャパンの監督…道也さんに歩み寄る。そして、そっと後ろから抱きつくような形で背中に手を添えた。

「…大丈夫よ。一番愛してるのはあなただから。」
「…分かっている。」

…なんて確信を持ったように言うくせに、背中に添えた手を放さないとでも言いたげに強く握ってくる。本当にこういうところは子供っぽいんだから。

わたしが一番面倒を見なければならない人は、きっとこのどうしようもなく可愛い人。
だからもう少しだけ、このイナズマジャパンの合宿所に通わせて貰おうかな。

Best love you!

ルチア様に捧げます。

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