思いっきり、膝を擦りむいてしまった。

さっきまでカオス戦の対策のために、リベロとして普段あまり走ることの無いフィールドを走り回って、豪炎寺くんとボールの取り合いをしていたかと思ったら。
思いっきり豪炎寺くんの足がわたしの足に引っかかってしまったのだ。
豪炎寺くんはとっさに体勢を立て直せたみたいだけど、わたしは自分の体重を支えきれなくてそのまま転んでしまったのだ。
…そして今に至る。

「円堂、悪かった!本当にすまない!」
「いや、そんなに謝らなくても…ちょっと擦りむいただけだし。」
「駄目だ、円堂。こういう場合は一発殴るべきだ。いやむしろ殴れ。俺も殴ってやろうか?」
「いやいや、鬼道くん。何か怖いよ!?大げさだってば、そんなに深い傷じゃないし!」
「駄目だよ、紗玖夜さん。女の子の肌を傷付ける奴は男の敵なんだから。」
「…それ、亜風炉くんにだけは言われたく無い気がする…。」

豪炎寺くんは何か土下座しそうな勢いで謝ってくるし、鬼道くんは鬼道くんでなんか何時もよりオーラがどす黒い感じがする。亜風炉くんは自分がしたことをしれっと棚の上に上げちゃってるし。吹雪くんもなんかにこにこしてるけど、笑顔が超怖いし。
同じフィールドで練習していたみんなも何事かとわらわら集まってきた。
何時もの如く、皆が大げさに騒ぎ立てている。…いやいや、だから大げさだってば。

「酷いぞ、豪炎寺!何でお前も転んでないんだよ!」
「塔子ちゃん、何か違うよ。」
「そうやで!女の身体に傷つけるなんて最低や!男の風上にもおけんへんな!」
「傷付けるって…試合中ならよくあるアクシデントだよ、リカちゃん。」

そして寄ってたかって豪炎寺くんを攻め立て始めた。…誰かちょっと止めようよ、今練習中なんですけど!
頼りの秋ちゃんを見れば、秋ちゃんも苦笑していた。そして一言。

「仕方ないよ。」
「何が!?」

さらりと言われた一言に思いっきり突っ込む。仕方ないって何が!?
悶々と考えこんでいるわたしの前に、春奈ちゃんと夏未さん、秋ちゃんが大げさなぐらいの救急箱や薬を抱え込んできた。

「豪炎寺くんの事は放っておいても大丈夫よ。多分生きているわ。」
「そうだね、まずは紗玖夜ちゃんの傷を手当しないと。」
「紗玖夜さんの肌に傷が残らないようにしないといけませんね!」
「待って待って!そんなに大げさに包帯とか巻かなくても大丈夫だから!…って豪炎寺くん!しっかりして!」

三人がかりで押さえ込まれてガーゼやら包帯やらをしっかり巻かれてしまった。
ふっと横を見れば、豪炎寺くんがみんなに袋叩きにされている。…いや、まあ壁山くんとか立向居くんとかは傍でおろおろしてるだけだけど…やりすぎだってば!

結局、今日の練習は豪炎寺くんがボロボロになっちゃったのと、わたしが固く練習禁止になったことから取り止めとなってしまった。
…今度から、最新の注意を払って練習をするように気をつけようと心に固く誓った一日だった。

だって女の子だもの!

藤森様に捧げます。

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