※Sun Like番外編

FFIの世界大会の舞台、ライオコッド島のイタリアエリア。
その中でも一番二番を争うほど大きな建物は、当然かもしれないが今回のメインイベントの担い手の一端である、イタリア代表チームオルフェウスの宿舎だ。

流石ルネサンス発祥の地と言うべきか、わたし達日本エリアに健在する慎ましい民宿なんかとは何か規模が違う。あちこちが綺羅綺羅しくて居心地が悪い。全然落ち着けない。
…しかも。

「良いじゃないか、別にちょっと話すくらい。」
「そうだぜフィディオ。確かにお前が連れてきたのかもしれないけど、別に彼女はお前のじゃないんだし。」
「だからといって君達が馴れ馴れしくするのはどうなんだ?」

何かわたしを中心にしてフィディオくんとマルコくんと、ジャンルカくんが言い争いを展開している。
折角、監督が1日丸々のお休みをくれたのに、休むどころか確実にわたしの体力が削られていく。…誰でも良いから、助けてほしいなぁ、切実に。

「大丈夫?ごめんね、無理に付き合わせちゃって…。」
「え、あ…ううん、アンジェロくんのせいじゃないし、気にしないで。」

はあぁ、と分かりやすく溜め息を吐くといつの間にかわたしの膝の上に座っていたアンジェロくんが心配そうに大きめの瞳をぱちぱちとさせながらこちらを見上げていた。
…可愛い、凄い癒される。

「あ〜もう、アンジェロくんってば可愛い!可愛すぎる!」
「そうかな?僕は紗玖夜ちゃんの方が可愛いと思うよ。」

思わずぎゅっと抱きしめると、わたしよりちょっとだけ小さな手のひらがふわふわとバンダナがある辺りの頭を撫でてきた。
それがあんまりにも可愛すぎたから思わず更にぎゅーっと抱きしめると突如両肩と両手に三人分の手が。

「「「アンジェロ、抜け駆けするなよ!」」」
「だってフィディオもマルコもジャンルカも紗玖夜ちゃんをほっぽって喧嘩してるんだもん。僕が話し相手になってあげないと。ね、紗玖夜ちゃん。」

三人の手によって強制的に緩められたわたしの両手から、マルコくんがアンジェロくんを引きずり出した。…ああ、わたしの癒しが。
それに対して不満なのか、少しだけ唇を尖らせたアンジェロくんがわたしに同意を求めてくる。…可愛い。本当に可愛い。

「…うん、アンジェロくん、本当に可愛い。弟に来てほしいくらい。」
「取りあえず全然話聞いてないな、紗玖夜。」

呆れたようにジャンルカくんが溜め息を吐いてわたしの肩に手を乗せる。そしてそのまま後ろに…ジャンルカくんがいるほうに引っ張られて、わたしの身体がちょっと後ろに傾いだ。そして、そのまま耳の辺りで。

「俺とデートしない?」
「でっ…。」
「ちょっ、ジャンルカ!」
「ずるいよジャンルカ!さっきまで紗玖夜ちゃんをほっぽってたくせに!」
「そうだそうだ、お前こそ抜け駆けするな!」

耳辺りで囁かれるのもそうだが、デートしようなんて言われたのは当然初めてだったので、それに対する免疫が無く。そのまま固まっていると、今度は周りがぎゃいぎゃい叫びだした。

「俺とイタリアエリアのパスタ店巡りしようぜ!」
「えー、僕と一緒にその辺りをお散歩しようよ。」
「紗玖夜、俺とゴンドラに乗ってみない?気持ちいいよ!」

マルコくん、アンジェロくん、フィディオくんが次々にわたしの腕やら肩やらを引っ張ってくる。何か先生に群がる幼稚園児みたいな感じだ。
でもそうはいっても相手は小さな園児じゃなくて中学生の男子だ。力もハンパじゃないくらい強い。
ぐいぐいと四方から強い力で引っ張ってくるのに耐えられず、思わず一言。

「じゃあ、もう皆でイタリアエリアを案内して!」

…まあ、結局案内してもらった先でそれぞれ喧嘩されて、全然観光って感じじゃなかったけど。
今度は絶対、一郎太とか豪炎寺くんたちと一緒に遊びに来ようと固く誓った一日だった。

早い者勝ち!

ハルカ様に捧げます。

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