※Sun Like番外編。秋ちゃん視点。

ここは、確か日本の雷門中だったと思うんだけど。私の勘違いかなぁ。
なんて思いつつもそっと後ろを振り返ると、確かに見慣れた稲妻のエンブレムが見えた。…間違いない、ここは私達が通う雷門中学校だ。

「チャオ、紗玖夜!遊びに来ちゃった!」
「来なくていい、今すぐ帰れ自分の国に。」
「鬼道くん、そこまで言わなくても…いらっしゃい、フィディオくん。」

声のしたほうをもう一度だけ顧みれば、やっぱり私が先程見た光景と同じものがそこにあった。
…心なしか紗玖夜ちゃんが引き攣った笑顔をしている。
まあ無理も無いか…練習後の休憩をしているときに突然後ろから抱きつかれてそのままだったら私だってそうなると思う。…紗玖夜ちゃん、モテるって辛いね。

「…で、フィディオ。何時まで円堂に抱きついているつもりだ?」
「そうだな、いい加減離せ。」
「固いこと言うなよ〜風丸、豪炎寺!いいじゃないか、ね?紗玖夜!」
「え…いや…わたし汗かいてるし…。」

抱きついたままのフィディオくんとそれをひっぺがそうとする風丸くんや豪炎寺くん。対して控えめに離れてほしいと伝える紗玖夜ちゃん。
けれどフィディオくんにそれは通用しなかったらしい、更にぎゅっと腕の力が強まったように見えた。

「別に汗臭くないし、平気だよ?何時もどおりの良い匂いがする。」
「に…!?」

あ、絶句した。こう言っちゃ何だけど、紗玖夜ちゃんのああいう初心な所が多分フィディオくんにとっては可愛く映るんだと思うなぁ。

「お前…変態か!?」
「何言ってるの?褒めただけだよね?」
「…ああ、うん…ありがと…。」

尚も引き攣った笑みのまま、紗玖夜ちゃんは何とかそれだけ返すと助けを求めるかのように私や他の人を見ている。…音無さんがいなくて良かった、きっと明日には色々とスクープにされていたに違いない。
…さて、どうやって助けてあげればいいものか。

「…フィディオくん、今日は何しに此処に?」
「ああ、そうそう!俺、初めて日本に来たからさ、紗玖夜に案内してほしいなぁと思って来たんだよ!」
「そ、…そうなの…。」

笑顔でどうかなぁ?と彼女に頼み込んでいるフィディオくんの顔に一切悪気は認められない。多分、あれは本心から言っているんだろう。…だからこそ、紗玖夜ちゃんは断りきれなかったんだろうなぁ。

「…うん、まあ案内するくらいなら…。」
「ホント!?やった、じゃあ行こうよ!」
「え!?いや、わたしまだユニフォームのまま…!」

ずるずるずる。こんな効果音が聞こえてきそうな勢いのまま、紗玖夜ちゃんが連行されていってしまった。
一時は沈黙がグラウンドを包んでいたけれど、直ぐに風丸君や豪炎寺君、鬼道君が騒ぎ出して、グラウンドから出て行ってしまった。
…ごめんね紗玖夜ちゃん。私じゃもう、止められないよ…。

嵐のような訪問者

華那様に捧げます。

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