※Sun Like番外編

今の俺の状況を一言で言い表すなら“置いてけぼり”だろう。
前方を窺うようにそうっと見てみるが…ああ、やっぱり。

「紗玖夜さん、音楽好きですか〜?今度一緒に鑑賞しません?」
「え?あ、うん…時間があったらね。」
「円堂、次の休み空いてないか?水族館のチケットがあるんだけど…。」
「え、と…。」
「円堂、次の休みは部活やるんだろう。佐久間、それはまた今度にしろ。」
「…あれ?部活だったっけ…?」

完全に入る隙間がないほど彼女―円堂紗玖夜は人に囲まれていた。

誰が提案したのかよく分からないが(まあ辺見や成神あたりだろう)、雷門と帝国は合同合宿を行うことになり、雷門中の理事長の紹介で決まった合宿所にいるわけだが。
雷門側のキャプテンである円堂はモテるのだ。…分かっていたことだが。
だがここまで来ると何か落ち込む。うっかりぼんやりしていたさっきまでの自分が恨めしい。
僅かな間に帝国のメンバーは彼女の周りに集まって我も我もと話しかけたりしている。

「ねぇ一朗太、次の休みってわたし、部活入れてた?」
「ああ、入れてたな。」
「間違いない。」
「そうだったっけ…?ごめんね、佐久間くん、水族館はまた今度誘ってね。」
「あ、ああ…気にするなよ…。」

しかも、雷門側のガードも固い。何せ向こうには元、俺達のキャプテンだった鬼道がいるのだ、相当手強い。

…本当に、何でもっと早く話しかけなかったんだろう。

***

人が沢山いるなかにいるのはそんなに苦痛じゃない。今だってそこそこ楽しんでいる。
わたしの周りをわらわらと取り囲むように円になって集まっている帝国と雷門のメンバー。
しかも微妙に帝国の方が多い。普段見ない顔がいるだけで大分新鮮だ。
一年生の成神くんや洞面くんはうちの少林くんや栗松くんに負けないくらい可愛いし、同じ学年の辺見くんや寺門くんだってちょっと顔が怖いだけで実は優しかったりしたし。

…ただ、それよりも気になるのは。

(…何あの源田くんの表情可愛い…!)

さっきからちらちら人の隙間からこちらを窺うように見ている帝国側のGK、源田くんの表情が可愛い事。
いや男の子としては悪いかもしれないけど本当に可愛い。

前々から源田くんには犬みたいな雰囲気を感じていたけど、今の彼の表情は何ていうか…雨の中段ボールで捨てられた子犬みたいな感じの顔をしている。
…可愛い。頭撫でたい。

***

ふわ、と頭に手が乗った感触がして顔をあげれば、そこには何故か満面の笑みを浮かべた円堂の顔が。

「円堂?」
「何?」

いや何?じゃなくて。
何でここにいるんだろうか、さっきまであそこにいたのに。…俺的には嬉しいけど。

「源田くんホントに髪の毛もふもふ…犬みたい。」
「そうか?」

幸せそうな表情で俺の頭を撫で続ける円堂に心底癒される。
さっきまで萎んでいた気持ちが嘘のような気になった。
…屈みっぱなしの体勢はキツいが、暫くは円堂に頭を撫でられていようか。
少なくともその間なら、彼女を独り占め出来るだろうから。

彼女だけに効くスキルアップ

昴様に捧げます。

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