マネージャーの仕事っていうのは、意外に大変だ。力もそれなりにいるし、体力だって凄く使う。
…でも、皆が喜んでくれるからわたしも頑張ろうって思える…だけど。

「ちょっと、紗玖夜!働きすぎ!少しは休んで!」
「兄さん、そうは言っても皆が…。」
「皆よりも紗玖夜の方が大事!」

兄であるフィディオがことごとくその邪魔をするのは何とかならないだろうか。というかなんでこの人まだこんなに元気なんだろう。あんな特訓の後なのに…。
いつものごとく、特訓が終わったにも関わらず元気一杯な兄によって肩をつかまれ、そんなに動いてもいないのに強制的に休ませようとしているのを必死で阻止していた。

「まだマルコとジャンルカがドリンク飲んでないし…。」
「あのね、マルコとジャンルカくらいどうって事無いの!紗玖夜がちゃんと休む方が先!」
「おいおいフィディオ…。」
「そりゃねえぜ…。」

兄さんの言い様に苦笑、というより呆れを隠せないかのような表情でマルコとジャンルカが溜め息を吐いた。…疲れているのに、何か申し訳ない。

「兄さん、お願い、せめて自分の仕事くらいきちんとさせて。」
「…でも。」
「お願いだから。」
「…しょうがないな、今回だけだよ。」

必死に頼み込んでようやく出た了承にほっと一息。
渋々といった感じでわたしの肩を離した兄さんはブラージに呼ばれてそちらに行ってしまった。…勿論、わたしに早く休むように釘を刺すことも忘れずに。

「…ごめんね、マルコ、ジャンルカ。2人だけドリンク遅くなって…。」
「良いって、紗玖夜のせいじゃないからさ。」
「そうそう。あのシスコンが悪い。」
「愛されてるよねぇ。」

申し訳なさから2人に謝ると2人は苦笑しつつわたしの頭を代わる代わる撫でた。下からはアンジェロが楽しそうにくすくす笑っている。…笑い事じゃないよ。

「兄さんはやりすぎな気がする…わたしそんなに柔じゃないのに。」

軽く唇を尖らせて座っていたマルコの隣に座ると立っていたジャンルカにまた頭を軽く叩くように撫でられた。

「…ま、フィディオの気持ちも分からないでもないけどな。」
「だな。やっぱり妹って可愛いもんなんだろうな。妹分だってこんなに可愛いんだからさ。」
「…?」

2人が言う意味がよく分からなくて首を傾げていれば、アンジェロがわたしの膝をトントンと叩いて天使のような笑みを浮かべた。
…あ、可愛い。

「紗玖夜は可愛いねって事だよ。」
「え、あ、うん…ってそんな事あるわけないじゃない。アンジェロのが可愛い。」
「えー?」

わたしの言葉に不服そうに膨らまんだ彼の頬をつつきながらマルコやジャンルカと喋っていたら、突然後ろから衝撃。
…大体誰がやったかは分かってるし、言ったって直してなんかくれないからあんまり言わないけど…。

「…兄さん、苦しい。離れて。」
「嫌だよ。離したら紗玖夜は俺以外の男と話すだろう?」
「…あのねぇ…。」

流石のわたしも呆れて溜め息しかでない、この台詞。…この人、ホントにわたしの兄さんなんだろうか。
フィールドの上では誰よりもカッコ良くて尊敬できる人なのに…。
もう一度溜め息を吐くと隣から熱が消えた。何事かと見ると、マルコは笑ってわたしの肩を叩いて立ち上がっていた。

「…頑張れ。」

しかも微妙な応援つき。
思わず頭を抱えかけて…それを兄さんに阻止される。
首をひねって後ろを見れば…わあ、良い笑顔。

「じゃあ#NAME3#、俺と休憩しようか。」
「…はいはい。」

…仕方ない、今だけはこのどうしようもない甘えたな兄に付き合ってあげようかな。
また“休め”なんて言わせないくらい、ゆっくり休んでやろう。

戯れ愛の兄妹

潤様に捧げます。

12


[*前] | [次#]