※男夢主。

宇宙人騒動。そう呼ばれていた騒動も終わり、僕達“宇宙人”と呼ばれていたおひさま園の子供達は皆、おひさま園に戻ってきていた。
…と言う事で。

「玲名、デートに行こう。」
「…ふざけているのか#NAME2#。」

***

取りあえずゴネる玲名…元ジェネシスメンバーのウルビダこと八神玲名をおひさま園から連れ出す事に成功。富士の麓にあるちょっとしたカフェにとりあえずは連行する。

「そんなにむくれたような顔しないでよ、玲名。折角の美人が台無しだよ。」
「#NAME2#…そんなに私を怒らせたいのか?」
「まっさか〜。ヒロトじゃあるまいに、そんな自虐的なことしないよ、僕は。」

ヒロトが聞いたら怒りそうだが、今はいないから冗談として言わせてもらおう。くっと笑って見せれば、玲名は更に面白くなさそうにぷいっと僕から目をそらしてしまった。
…うーん、ヒロトの話は駄目みたいだなあ。相変わらず馬が合ってなさそうだ。

ぼんやりしつつオーダーしたコーヒーを啜る。彼女はまだご機嫌斜めのようで、折角オーダーしたレモンティーに口さえ付けずに頬杖をついて不機嫌そうにしている。…やれやれ、相も変わらず無愛想は健在らしいなぁ。
思わず唇の端を上げると、きっと睨んできた。…いい加減その睨みつけるのは止めてくれないものか。
元が美人なだけ、睨みあげられるとそれはそれは恐ろしいのだ。…ま、慣れてしまった僕にとってはたいしたことじゃないけど。

「…で?お前、一体何がしたいんだ?」
「ん〜?うーん…なんだろうねぇ?」
「…帰る。」
「うわっと!嘘だって〜。相変わらず短気だなぁ。」

席を立ちかける玲名を何とかなだめる。冗談が通じないところも、何もかも変わってないらしい、な。
だからこそ、僕は此処に彼女を連れてきたわけだけど。

「…玲名、あれから笑ってないでしょ。」
「…あれから…。何時からだ。」
「とぼけなさんな。…ジェネシス計画が発足してから、だよ。少なくとも、同じチームだった僕でさえ、君が笑ってるのをあれから一度も見てない。…違う?」

図星だったのか、それっきり俯いて黙ってしまった玲名を眺めながら、もう一度コーヒーを啜る。…まあ仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
彼女はお父様にぞっこんだったから、ジェネシス計画においても最も尽力していた。…ま、僕はお情けで付き合ってたみたいなもんだけど。
父さんが一人で勝手に復讐するならまだしも、僕らみたいな拾ってきた行き場の無い子供を使って復讐するんだもんねぇ。ホント、狂ってるとしか思えなかったし。

…まあそれは置いといて。

「人生ってさぁ、短いだろ。今のうちに笑い方思い出しとかないと、これからが辛いよ?」
「…お前…そのために私を此処に…。」
「まあね。…それとも、僕と来るよりヒロトと来る方がよかった?」

呆気に取られたように呟いた玲名に、茶化すようにそう返せば、改めて驚いたような顔をして…。

「…それだけは御免だな。」

フッと小さく笑みを漏らした。控えめで、昔のような面影は全く無いけれど。
でも、きっと、これで彼女は今から上手くやっていけるようになる。
だから今は、僕だけがこの笑顔を独占していようかな、なんて…思ったりしてね。

笑顔の記憶

華鉈様に捧げます。

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