※立向居成り代わり女の子夢主。

ざっと目の前に並んだ先輩たち。円堂さん、綱海さん、豪炎寺さん…、いずれにしても私にとってはそうそうたる先輩方がずらりと並んで私を眺めている。
…何だろう、何か言われるのかなぁ。もしかして私、何かした?

ドキドキしながら(良い意味でも、悪い意味でも)、目の前の先輩たちが口を開くのを待つ。
やがて円堂さんが真顔でゆっくりと口を開いた。ごくり、喉が自然と鳴ってしまう。

「…立向居。」
「は、はい…何ですか、円堂さん。」
「お前…。」

何だろう、何がくる!?お叱りでも受けるんだろうか?
思わず身構えた次の瞬間、ぽん、と頭に軽い衝撃を受けて。は?と一瞬呆けてしまった隙に、わしわしと頭を撫でられた。

「可愛いな!」
「………え、は?あ、ありがとう…ございます…?」

恐る恐る自分より高い位置にある円堂さんの顔を見上げてみれば…子犬もかくやという
満面の笑顔。…いえ、あなたのほうが可愛いです。なんて、思っても絶対に言えない。
取りあえず突然の切り替えに呆気にとられていれば、綱海さんや豪炎寺さん、鬼道さんも寄ってきて我も我もと言わんばかりに私の頭に手を伸ばした。
…そして、一気に頭が重くなる。…でも我慢、我慢。怒られてるわけじゃないんだし。

円堂さん達がキャラバンで私を仲間に加えてくれて以来、偶にこうやって頭を撫でられたり突然後ろから抱き上げられたり、果ては何故か顎の下を撫でられたりすることがある。顎の下を撫でられた日にはびっくりして思わず秋さんの後ろに隠れてしまったものだが、曰くあれは彼らが私を可愛がってるからするのだ、という事を懇々と諭されて丸め込まれてしまった。

そして今現在に至る訳だ。ここまで来る間の長い間、こうやって頭を撫でられることに慣れてしまったので、今更何とも思わない。ただ先輩たちの気が済むまで大人しくされるがままになるだけ。

「うーん…本当に紗玖夜は癒されるぜ…。」
「…だな。」
「ああ。癒される。」
「可愛いな〜。」

それぞれ頭の上を飛び交う会話に思わず「私って実は愛玩のぬいぐるみみたいなもの?」と思ったがその思考を振り払う。…何にせよ、先輩達の役に立てているなら光栄に思うべきだ。うん、そうだ、そうに違いない。

こうして私は何時もの如く、塔子さんや秋さんに救出されるまでじっと先輩方にされるがままの体制を貫き通していた。

癒されたいの!

紺野様へ捧げます。

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