御影専農中に無事勝利し、準決勝まで駒を進めた雷門中。準決勝で勝てれば、もう一度帝国と試合出来る。そして、決勝を勝ち抜けば初の全国大会に出場出来る。
その思いを胸に、わたしたちは一歩づつ確実に強くなっていった。
一つ一つの試合を重ねる度、士気があがってゆく雷門中だったのだが…そこにちょっとした問題が持ち上がった。

「…本当にすまない。」
「いいよ、そんなに気にしなくても!…その足の怪我じゃしょうがないもん。」

校門の前に止まったタクシーの扉の前で凄く申し訳なさそうにしている豪炎寺くんが目を細めてこちらを見ていた。
片足には包帯がぐるぐると巻かれ、両手の松葉杖で体を支えている。
…この間の御影専農中との試合の相手との接触が酷かったらしい。

豪炎寺くん曰くそんなに酷くないらしいが、医者に止められているし、何より松葉杖ついてる時点で全然大丈夫くないので、とりあえず通院して完治させてくれ、と言う部内全員の意見が一致し、暫く部活をせずに早めに帰ってもらうことになったのだ。

「大丈夫だよ豪炎寺くん。準決勝はわたし達で何とかするから!!」

未だに申し訳なさそうにしている豪炎寺くんにわたしがそう言えば、後ろの皆も口々に同意を示す。
傷の具合から見て、恐らく準決勝は無理だろう。
今まで何処と無く豪炎寺くんに頼っていたのだから、今回位はちゃんと自分たちの力で何とかしなければ。

豪炎寺くんを乗せたタクシーが走っていくのを見ながらそう決心する。そして微妙にまだやはり不安げな表情をしている部員達に声をかけた。

「…さあ皆、今日も特訓頑張ろう!」

***

「次の対戦校ってまだ決まってないの?秋ちゃん。」
「うん、まだ決まってないよ紗玖夜ちゃん。準々決勝の尾刈斗中対秋葉名戸中を勝った方と試合するの。」

練習を終え、部室に集まってミーティングしていた時に出た気になる次の対戦校の名前が話題に上がる。

「尾刈斗中って…あの変な監督がいる…。」
「いやいや、選手も充分変だからね、キャプテン。」

思わずあの変な監督の顔を思い出して呟けば松野くんに呆れたような口調で突っ込まれる。…うん、でもわたしにとって何よりも印象に残っているのが監督なんだよ…。

「あれからどうも尾刈斗中は戦力を増強したみたいだよ。」
「あいつらが更に力をつけたのか…。」

一度戦ったことがあるぶん、皆もあの学校の怖さが身に染みているらしい。
一気に皆の顔が引き締まった。

「…で?相手の秋葉名戸中は、どんなチームなの?」

緊張感を持ってざわめく皆を落ち着けるように、夏未ちゃんが口を開く。…そういえば秋葉名戸中って聞いたこと無いなあ…。

「えーっと…学力は優秀であるが、少々マニアックな生徒が集まった学校。フットボールフロンティア出場校の中では最弱の呼び名が高いチームで…な、何これ!?」

とつとつとメモに書かれたことを読み上げていた秋ちゃんが突如悲鳴のような声を上げたことで、周りの空気が一瞬固まる。…何なんだろう?




 


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