秘伝書を持っていることをすっかり忘れていた失態を一郎太にこってり絞られて、その翌日の部室。
わたし以外の人間に読めない、最早暗号と言ってもいい位の汚いお爺ちゃんの字をひたすら読み解いて、高さを習得する必殺技を見つけ出した。
その旨を告げれば、皆嬉々とした表情でどんな技かと聞いてきた。…しかしこれはちょっと言いづらい…。

「…イナズマ落とし、っていう技みたい。」
「カッコいいっすね…!どうやってやるんすか?」
「…えと…一人がビョ―ンって飛ぶ、もう一人がその上でバーンってなって、クルってなってズバーン。これがイナズマ落としの極意…らしいよ?」

皆を見れば、ひっくり返っていた。…当然かなぁ

「…円堂、お前の爺さん、国語の成績良かったのか?」

口元をヒクつかせながら一郎太が苦笑だか何だかよく分からない乾いた笑みを漏らす。
それに対し、わたしは首を横に振った。…振らざるを得なかった。

「全然良くないよ。…成績表を見たことがあるの。お爺ちゃんの、ね。…いっつも赤点ぎりぎり、若しくは赤点だったよ。」

わたしの言葉に皆そうだろう、と頷いていた。…何か情けないよ、お爺ちゃん。せめて国語くらい平均点であってほしかった。

「…でも…これをヒントに自分で何とか考えたら、このイナズマ落とし、習得できると思う。…ゴッドハンドの時も、こんな感じだったから。」
「…お前よくゴッドハンド習得できたなこんなので…。むしろ尊敬するぞ…。」

もう呆れた、とでも言わんばかりの一郎太から目線を反らすと(これ以上目線を合わせてるともう何か泣いちゃいそう)、とりあえずは普段どおりの特訓をしよう、と皆に指示を出す。…この技の方は…今日中、もしくは明日中にでも考えておこう。

***

その日の特訓は各自20分くらいの時間で、ストレッチ、走りこみ、シュート練習など好きなように身体ほぐしをしてもらってから相手の技を受ける特訓をすることになった。
担当は染岡くんがしてくれるらしく、わたしはその間に技を考えておけとの事。
…考えておけっていわれても、ちょっと無理かもなんですけど…。

皆が大きくて物凄い勢いで落下してくる大きなタイヤで吹っ飛ばされてるのをぼんやりと眺めつつ先程のビョーン、バーン、クルッ、ズバーンの意味を考える。
ゴッドハンドのときは何となく挿絵みたいなのが(下手だったけど)ついていたから分かりやすいといえば分かりやすかったけど、今回のは挿絵らしきものの意味が分からなかった上に、文章も更に分からない。

…本当にわたしにどうしろっての、お爺ちゃん。



 


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