そして試合当日。何だかやっぱり天気がよくない。何処か曇り空で、気が沈みそうな曇天だった。
わたしは空を見上げて溜め息を吐く。…何かこういう天気の時って気分が乗らなくてヤダなぁ。まあ、そんな事言ったって試合は待ってくれないんだけど。

尾刈斗中との試合を観戦に来ている生徒たちはわいわいと騒いでいて、こちらの緊張など知ったこっちゃないと言わんばかりにしている。そして、部室の中ではやはり豪炎寺くんと染岡くんのやり取りが…いや、主に染岡くんの方だけど…ぴりぴりしたものが続き、気が休まるときが無い。
一郎太が気を利かせて一生懸命二人をなだめようとするも、染岡くんはヒートアップしていて手が付けられないし、豪炎寺くんも我関せずという感じで軽くいなしていて話にならない。
よって部室の空気は物凄く空気が悪かった。

「大丈夫か、円堂。何か顔色悪いぞ。…気持ちは分かるけど。」
「気にしすぎだよ、一郎太。大丈夫。…ごめん、ちょっと外の空気を吸ってくるね。」

小声で囁いてくる一郎太に一言侘びを言って部室の外に出る。…残念だけど、今この場所に居続けたら、多分気分悪くなっちゃう。…本当にどうしたら良いんだろうか。

頭を抱えつつふらふらと行く当てもなくただただ校内を散歩していくと、何だか見た面子が二人、並んでいた。…何をしにきたのかな?

「…今、ここに来たって言うことは、試合が目的なの?…鬼道くん、佐久間くん。」
「…あの日ぶり、だな、円堂。」
「俺と喋るのは初めてだな。よろしく、円堂。」
「…お久しぶり、ね。鬼道くん。こちらこそよろしく、佐久間くん。」

帝国学園のキャプテンと参謀さん、二人そろって雷門と尾刈斗中との試合を観戦しにきた…ね。

「…で?わたし達を笑いにでも来たの?」
「…お前らしくなく苛立っているな。」
「…。…ごめんなさい。」
「円堂、気にすることはない。…鬼道、あんまりからかうなよ。傍から見ればそう見えてしまうだろう。」

鬼道くんは面白そうに口角を上げ、佐久間くんは眉を顰めて鬼道くんをたしなめている。…うん、確かに司令塔と参謀って言う感じだ。

「まあ何でもいいや。何か二人のやり取り見てたらどうでも良くなっちゃった。…じゃあね、試合観戦するのも結構だけど、野次だけは飛ばさないでね。飛ばしたら怒るよ。」
「そんな事するとでも?」
「分かんないよ?しちゃうかもしれないもん、特に鬼道くん。佐久間くんは…まあ心配しなくてもいいかな。」
「あー…ああ。ありがとう。」

未だに楽しそうに笑い続ける鬼道くんと、微妙に顔を引き攣らせた佐久間くんのギャップに思わず笑って、気分がすっきりしていくのを感じる。良い気分転換になったかも。

「良い試合を期待している。」
「頑張れよ、円堂。」

二人に背を向けた後掛かった二つの声に思わずありがとう、と返す。
ちょっと、いやかなり励まされた気分になった。うん、ありがとう二人とも。




 


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