新しく出されたフィールドに少し感動を覚える。流石帝国学園、さっきまでもうフィールドがぼこぼこになってたのに、もう綺麗になってる…。
感動を覚えて思わずはしゃいだ声を上げたら、夏未ちゃんが微妙な顔をして目をそらした。…どうしたのかな?

一番の心配のタネだった帝国の監督さんは、安西という人が代行する事になったらしい。鬼道くんが中心となって帝国イレブン全員が安西さんを取り囲んで脅…じゃなくて、丁重にお願いしていたのを見たのだ。
正直…怖かった。凄く怖かった。でも、取り敢えず安心して帝国と試合できるみたい。…良かった。

***

もう一度、試合開始を告げるホイッスルの音が響く。それと同時に豪炎寺くんと染岡くんが一気に帝国のゴールに攻め上がった。ディフェンスを交わして、ドラゴントルネードを放つ。…がしかし、源田くんの必殺技、パワーシールドに弾かれてしまっていた。そして、ボールは鬼道へ、帝国がこちらに攻め込んできた。

真っ直ぐこちらに攻め上がってくる鬼道くんが目に入る。…瞬間、影山さんの言葉がわたしの脳内に響いた。

―鬼道が負ければ、2人は破滅する。
―優しい君に、それが耐えられるかね?

思わず唇を噛む。…でもわたしだって負けられない。わたしには雷門中のキャプテンとして、GKとしての責任がある。…手を抜くわけには、…。

「百烈ショット!」
「…熱血パンチ!…あ…!」

低い声によってシュートが来ていることに気付いたわたしは咄嗟にパンチングで止めようとした…が、止めようとしたボールがわたしの手からすり抜けてしまった。幸いにしてゴールポストに当たって弾かれ、得点にはならなかった。…しかし、帝国側にコーナーキックを許してしまう結果になる。

「大丈夫か、円堂。落ち着いて行こうぜ。」
「あ…うん、そうだよね、一郎太、落ち着かなきゃ、ね…。」

妙な違和感を覚えながら、心配した表情の一郎太達DFにそう返した。返すしか無かった。だって、この違和感の正体が何なのか、わたしには分からなかったから。

***

鬼道くんのコーナーキックから佐久間くんのヘディングシュート。
ただのノーマルシュートの筈なのに、どうしても一発で止められなかった。体でセーブしたから良かったものの…わたしは一体、どうしてしまったのだろうか?
手加減しないと決めたし、手加減してるつもりは微塵も無い。無いけれど、どうしても調子が上がらない。
もどかしさに捕らわれていたら、真正面からくる鬼道くんへの反応が遅れてしまった。慌てて迎え撃とうと構えた…瞬間、豪炎寺くんが前線から戻って、鬼道へ激しいシュートブロックを仕掛ける。
流石の鬼道くんもこれには耐えられ無かったのか、弾き飛ばされてしまっていた。…しかし、その際に足を痛めてしまったらしい、洞面くんがボールを外に出して試合は一時中断となった。

「…豪炎寺くん、ありがとう!」
「…調子が悪いのか?」

助けてもらった豪炎寺くんにお礼を告げれば、彼はそれには答えずに真っ直ぐわたしの目を見据えた。
怖いくらいに深くて、真剣な光を湛える黒い瞳と視線がかち合って、何だか怖かった。

「…ううん、大丈夫。」
「…そうか。」

言葉少なにわたしに背を向け、去っていく広い背中に、わたしは思わず泣きたくなってしまうのを何とか堪える。
この試合が始まってから、何だか精神的に不安定で、落ち着かないからだろうか。胸の中で蠢く得体の知れない恐怖に、わたしは為す術無く立ち尽くすしかなかった。



 


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