生まれて…というより、生まれ変わって、と言った方が良いのか…わたしの苗字が円堂という名に変わってから、色々な事がわたしの中で変わっていった。

まず、“家族”というものが出来た。
親の顔を知らなかったわたしは、実質上初めて出来た両親が直ぐに好きになれて、家族と言うべきものを、わたしは初めて手に入れることが出来た。

そして、身体に不自由が無くなった。身体はいたって健康状態。足も動くし、病気がちでもなく、前の人生では出来なかったことがたくさん出来るようになった。

外に出て、色んな物を見て、聞いて、触って。病院の中では触れることの叶わなかった様々なものを知ることが出来たし、学校にも通うことが出来るようになった。
同年代の子とも外で遊べるようになった。中でも一番仲が良いのは、男の子にしては綺麗な髪とぱっちりした瞳をもつ風丸一郎太という男の子。

彼はご近所に住んでいて、よく一緒に遊んでもらった。外見の女の子っぽさに反して、何だか性格はとてもしっかり者だったから、お兄ちゃんでも出来たみたいな感覚で、とても嬉しかった。

―そして、何よりサッカーが出来るようになった。憧れて止まなかった、サッカーが。

円堂のお爺ちゃん…大介って名前らしいけど…偶然にも、前のわたしのお爺ちゃんと同じく優秀なゴールキーパーだったらしかった。
わたしが産まれるずっとずっと昔…お母さんがまだ小さかった頃に亡くなってしまったらしいけれど、それとなくお父さんからそんな話を聞いた。
お母さんはお爺ちゃんの一件でわたしがサッカーをやることに反対していたみたいだったけれど、結局わたしが無理を押し通した。―どうしても、サッカーをやりたかったから。

わたしのあまりの我侭っぷりに呆れたのか、言っても無駄だと悟ったのか。なんにせよお母さんも渋々ながらにわたしがサッカーをするのを許してくれて、更にお爺ちゃんが書いて残した特訓ノートを渡してくれて。
正直、字が汚すぎて最初は何を書いてあるのか全然分からなかったけれど、それでも根気よく一生懸命読んでいると、少しずつ解読出来るようになって。

鉄塔広場、という夕日がとても綺麗な、この稲妻町全体を見渡せる場所を見つけて、そこに吊るしてあったタイヤを相手に毎日のように特訓をするようになった。
同じ時期に小学校でも男の子に混じってサッカーをやるようになり始めた。…勿論、ポジションはGK。
同年代の男の子たちには何回か別のポジションに移ったらどうだ、と言われたけれど、どうしてもこのポジションに対する思い入れが強かったから、わたしはその提案を頑として退け続けた。

そんなこんなで、わたしは今年、中学校2年生に進級してサッカー部のキャプテンをすることになった。
メンバーは足りないし、ほとんど練習にやる気が出ない部員ばっかりだけど…マネージャーをやってくれてる木野秋ちゃんっていうお友達も出来たし、何だかんだで楽しい毎日を送っていた。

―そんな時に、“彼”に出会った。今思えば、そこから様々な事が始まったのかもしれない。
けれど、その時のわたしにはこれから起こる出来事を、予測なんて出来なかった。



 


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