源田くんはそのまま鬼道くんを追いかけていったのを見送って、わたしがフィールドに戻ってきた瞬間、凄まじい悲鳴が聞こえて思わず飛び上がりそうになった。今の声は…宍戸くんの声?

「どうしたの!?」
「キャ、キャプテン…すみません、もう悪戯しませんから〜!!」
「…はい?」

焦って駆け寄れば、壁山くんに起こされた彼はわたしの腰にしがみついて泣きながらごめんなさいと繰り返し言っていた。…何のことなのだろう?
つい、と視線を降ろせば、普通のボルトにしては太く、大きなボルトがいくつも突き刺さっている。…これが、天井から落ちてきたのだとか。

「…こんなものが、天井から…?」
「ああ、危ねえよな、宍戸に当たってたらどうなってたことか…。」
「…最悪死んでたかもしれないよね、これ…。」
「…打ち所が悪かったらな。」

3,4本のボルトを手のひらに載せてみたら、ずっしりと重たかった。その重たさと、フィールド上のスポットライトから浮かんで見える冷たい銀色の輝きにぞっとする。…そういえば、先程影山さんはこの試合に対して何か仕掛けているかも、と言っていたような。
改めて影山さんへの恐怖が沸き起こり、ボルトが収まる手のひらをぎゅっと握り締めた。…まもなく、キックオフの時間だ。

***

ずらりと並んだ両校の選手が向かい合って握手を交わす。…1人1人がこちらを真摯な目つきで見定めているのを見て、不意に最初の帝国との試合を思い出す。…あの時は、こんな目で見てもらえなかった。ひたすら、弱者であると蔑みの目線を感じていたような気がする。

そんな事を懐かしく思い出しながら思わずくす、と笑い声を漏らせば、たまたま真向かいと斜め前にいた源田くんと佐久間くんがが一瞬不思議そうな顔をした後、楽しそうに、若しくは優しげに顔を緩めた。握手をする大きな手が、やはりあの時と変わらずに力加減をして包むようにわたしの手を扱ってくれて、すこしだけ、心が和む。

そして、最後に緊迫した面持ちを保ち続ける、鬼道くんと握手を交わす。微かにわたしの手よりも暖かな、それでも冷たい手がわたしのそれをぎゅっと握って、―そして、わたしの体はぐいっと鬼道くんの体の方に引き寄せられた。
驚いたのもつかの間、彼が耳元で囁く。…信じがたい、このフィールドの上に仕掛けられた影山さんの“罠”の在り処を。




 


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