※響木視点。

大介さんのたった一人の孫娘。どうやらその孫娘もサッカー馬鹿の血をしっかりと受け継いでいるらしい。向こう側でグローブを嵌めて、落ち着こうとしているのか目を閉じて手を組んでいる孫娘に目をやる。
その辺の女子よりも線が細く、頼りなく見えるその体で、どこまでGKとしての役割を果たすのか、有る意味では興味を持っていた。
普通なら、GKというのは体格が良い、しかも男子チームに所属しているならば男子がするべきポジションだと思っていたというのに。大介さんの血が混じっているのか、孫娘にはそんな常識は通用しないらしい。

暫くぶりに体を動かすため、リフティングをしていたら円堂が声をかけてきた。…あちらの準備は整ったらしい。

「久しぶりだって言う割には、お上手ですね。」
「世辞なんて言っても何も出ないぞ。」
「…別にそういうのじゃ…。」

苦笑してから構えに入る円堂を横目に、いきなりシュートを打つ。驚いたように目を見開いていたが、すぐさまにそのボールの軌道を読んで喰らいついてきた。そして、見事にボールを弾いてしまう。…なるほど、中々やるようだ。

「一本目!」

細い指をぴっと立てて嬉しそうに笑う彼女に、こちらも思わず昔を思い出して笑いがこみ上げてくる。そしてそのまま、もう一度何も言わずに不意打ちでシュートを放つ。
今度はそれに驚いた風も無く、ボールの前へ先回りして、何とも懐かしい技―熱血パンチで弾き返してきた。

「熱血パンチまで使えるとはな…。」
「二本目!あと一本、ですね!」

楽しげに笑って長い髪を払う円堂は大介さんとは姿かたちが似ても寄らなかったが、それでもまるでピッチに大介さんが帰ってきたような感覚に陥った。

「だが、あと一本止められなければこの話は無しだぞ。」
「分かってます!必ず止めて見せますから!」

鬼瓦の親爺が言うことが本当なら、その実力、見せてもらおうか。
渾身のシュートを放つ。久々であろうと、その威力はどうやら衰えてはいなかったようだ。フィールドの砂を巻き込み、空気を揺らすそのシュートは、狙い通り真っ直ぐに円堂に向かってゆく。
対して、彼女は。

「…ゴットハンド!」

まさしく、大介さんが生み出したGK技を使い、俺のシュートをいとも簡単にとめて見せた。この勝負は、俺の負け、のようだ。

嬉しそうに笑ってボールを抱える円堂の孫娘に歩み寄る。…こいつらなら、昔の俺たちが叶わなかった夢を叶えられるかもしれない。そんな事を考えながら。



 


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