鬼瓦さんにお礼と謝罪を告げて、わたしは鉄塔から急いで駆け下りる。唇を噛んで、急いで雷々軒へと足を速めた。

…イナズマイレブンは、誰かの手によって崩壊に陥れられた。全国の舞台を前にして、何者かの妨害によってその全国制覇をさしとめられてしまったのだ。
さぞ、悔しかったのだろう。でも、だからといってそれだけで諦めてしまうようなことがあってはいけないと思う。…勿論、こんなことは失敗や妨害を受けていないわたしが偉そうに言えることではないのかもしれないけれど。

雷々軒の扉を勢い込んで開ければ、おじさんは呆れたような目線でわたしを見て、溜め息を吐いた。

「…また、お前か。」
「また、わたし、です。」
「何度来ても答えは変わらんぞ。」
「…だったら、わたしと勝負していただけませんか。」

勝負だと?と声を上げて、新聞からわたしへと目線をあげたおじさんの顔をしっかりと見返す。そして頷いて見せた。

「はい。…鬼瓦さんから聞きました。貴方は昔、わたしと同じGKだったってことを。」
「あの親爺か…お節介な事を。」

そう呟いて、再びおじさんは新聞へと目線を落とし、小麦粉の値段が高騰したか、と独り言を呟き始める。…思いっきり、スルーされてる…。
しかし、これがもはや最後のチャンスといっても過言ではなかったわたしは、素直に引き下がることはせずに、思いっきり机に両手をたたきつけた。両手がじんじんと痛み出すのにも構わず、おじさんを睨み続ける。

「…昔の事は、聞いてます。一度出場できなくなったからって、それだけで諦めてもいいんですか?まだ、人生は終わってないんですよ?後悔しながら一生を生きていくつもりですか?」
「…小娘が。」
「そうです、わたしはまだ10年足らずしか生きていない、小娘です。…でも、これだけは分かります。…わたし達キーパーがしっかりと足を踏ん張って、お臍に力入れて。ゴールを守るからこそ、皆が安心して攻めていけるんだってこと。」

真っ直ぐに、視線をそらさずにそういいきれば、おじさんは沈黙の後に楽しそうな笑い声をあげて、懐かしげに息を吐いた。おじいちゃんも、わたしと似たような事を言っていたのだと。

「そう。…だから、わたしも貴方に、全力でぶつかります。…正々堂々、勝負しましょう!」
「勝負だと?」
「はい。わたしが貴方の打ったボール、3本中3本全て止められたら、監督になってください。」
「…大した自信だな?」

こちらを挑発するように不敵に笑ってみせるおじさんを見つめて、一息。

「やるんですか?やらないんですか?」
「…受けてやろうじゃないか。」

にやり、と笑った顔に、思わず安堵する。…さあ、絶対に止めなければ。



 


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テーマ「人外ファンタジー」
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