帝国との試合まで、後二日となった日の昼休み。

「どーすんだよ!試合まであと二日だぞ!?」
「…うー…どうしよう…。」

未だに監督が見つからないわたしたちは、頭を抱えていた。部員の皆も監督がいなければ参加が認められないため、やはりモチベーションが下がってしまって練習どころの話ではなくなってしまっている。
わたしは思わず屋上から見える空を見上げる。…因みにさっき大の字になって寝転がろうとしたら秋ちゃんと一郎太に叱られてしまった。…そういえば、今日スパッツ穿いてなかったっけ。

「また寝ようとするなよ円堂。お前は女子なんだから、もう少し恥じらいを持て。」
「…わかってるよ〜…。」

お説教染みた一郎太の声を右から左へ聞き流して、目を閉じて…決めた。もう一回だけ、雷々軒のおじさんのところに行って、お願いしてこよう。

***

(…で、何でわたし警察の人と一緒にここにいるんだろ…。)

隣で黙って鉄塔からの景色を眺めている鬼瓦さん、という刑事さんの横顔をちらりと盗み見て、密かに溜め息を吐いた。
放課後、急いで雷々軒へ向かおうとしたわたしの前に、この刑事さんが現れたのだ。何でも話があるとかで、わたしを半強制的に鉄塔に連れてきたのだが…鉄塔についた瞬間、黙ってそこからの景色を眺めるだけに留まってしまっている。…一体、わたしに何の話があるのだろうか?

「あの…?」
「…お前さん、サッカー部の監督を探しているんだってな。」

あまりにも長い沈黙に痺れを切らしたわたしが口火を開けば、彼は重々しくその口を開いた。その言葉に、わたしは思わず鬼瓦さんを見上げる。…何故、それを。

「どうしてそれを…。」
「いやあ…俺もお前さんと同じで筋金入りのサッカー好きでね。…お前さんが帝国学園との試合のときにゴットハンドを使った時は鳥肌が立ったね…。」
「イナズマイレブンを知っている…?って言うことは、おじいちゃんの事も…!?」

思わず身を乗り出すようになって聞き返せば、鬼瓦さんは快活に笑って見せた。

「大ファンだったぜ。お前さんの爺さんはそりゃあカッコよかったんだ。」
「そうなんだ…!」
「お前さんはあんまり爺さんと似てないみたいだけどな。まあ、孫娘だから仕方ないかもしれないが。」
「…外見的に似てるって言われたらそれなりに傷付くなあ…。」

苦笑気味に呟けば、鬼瓦さんはまた楽しそうにくつくつと喉を鳴らして笑った。…が、
次の瞬間、顔をゆがめて悲しそうな表情を作る。
どうかしたのか、と問えば、彼は悲しげにイナズマイレブンの悲劇を知っているか?と聞いてきた。

「イナズマイレブンの悲劇…。聞いたこと無い、です…。そもそもわたし、お母さんとかからはお爺ちゃんの話とか聞かなかったから…。」
「…そうか…。」
「あの、よければ教えてくれませんか、何があったのか。…知りたいんです。」

わたしは何も知らない。誰も教えてなんてくれなかったから、気にする必要なんてなかったけれど。事実が知れるのなら、知りたい。
そう思ってわたしは鬼瓦さんの口が開くのを待った。



 


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