宍戸くんや半田くんにも必殺技が出来て、皆も日に日に動きが良くなって。本格的に活動し始めた頃から随分と雷門イレブンも強くなってきた。
これなら、帝国学園と互角に渡り合えるだろう。確信を胸に、秋ちゃんと二人で練習を見ながら笑いあう。

「何か感慨深いよね…あの帝国との試合からはじまったんだもの。そうだよね、紗玖夜ちゃん。」
「うん。…もうほとんど部活として機能を停止させてたのに…こうやって活動できるなんて、凄く嬉しい。しかも今、フットボールフロンティアの地区決勝まで勝ち上がってきたなんて…。」

まるで夢みたい、と呟きかけて、止める。夢なんかじゃなくて、これはみんなの努力の成果だと知っているから。

「…勝っても負けても全国かぁ…まだまだ頑張らないとね、紗玖夜ちゃん!」
「…うん!よろしくね、秋ちゃん!…じゃ、わたし練習してくる!!」

しまじみと呟かれた秋ちゃんの言葉に頷いて、わたしもフィールドに駆け出す。
そうだ、ここはまだ道の途中。まだまだ、道は続いているのだから、これからもっと強くならなければ。

フィールドに入った瞬間、染岡くんに遅い!と怒られる。…遅れちゃった分、今からしっかり取り戻さないと!

***

次の日、練習に珍しく冬海先生が来ていた。…珍しい、あの先生顧問なのに滅多に部活に顔を出さないので有名な人なのに。どんな風の吹き回しだろう。
何気なく失礼なことを思いつつ、先生を視界の端にとどめ、練習を続ける。

(…でも何か…笑ってる…?)

いつも不機嫌そうにむっつりとした顔をしている冬海先生が、何だか笑顔だ。…何か、不気味。違和感を抱いていたその時、夏未ちゃんが冬海先生を呼んだ。
何やら話していると、突然冬海先生の表情がうろたえだす。何事かが起こっているようだ。

「どうしたの、夏未ちゃん?何かあったの?」
「あら、ごきげんよう紗玖夜。何でもないわ。ただ冬海先生に遠征で使用するバスの調子を見せていただくだけだから、あなたは何も心配しなくてもいいのよ。」
「バスの調子を…?ああ、うん、バスに不調があったら困るもんね…。冬海先生、わたしからもお願いします!」
「…く…。」

頭を下げれば、怯えたように焦ったように冬海先生が何かしらを言おうとしていたが、それもままならず、そのままがくりと項垂れたようにバス置き場に向かって歩き出した。…冬海先生、本当にどうしたんだろう?



 


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