「「ど根性バット!」」
「な…!」

1点、入れられてしまった。思わず唇を噛む。
何ていう失態を犯してしまったのか。完全に相手の力を舐めていた。

全く動かない拮抗戦の前半戦と打って変わって、後半のホイッスルが鳴った瞬間秋葉名戸の戦法ががらりと変わった。何と、ゴールキーパーを残して全ての人員が攻めにあがってきたのだ。
無論、その行動に驚いた雷門はそれに中々対応出来ずに次々と抜かれてボールを維持されてしまう。

「あいつら、前半戦は体力を温存していたのか…!!」
「皆!ディフェンスを固めて!」

一郎太も前の方に飛び出していって、わたしも固まったままどうしていいか分からないDF陣に声を掛けて守りを固めようとするも、間に合わず。
FW二人が上がってきたときは、ゴールはわたし1人になっていた。
おまけに、今まで見たことも無いような奇抜な必殺技に度肝を抜かれ…結果、ボールに対する反応が遅れてしまい、見事に先制点をあちらがわに渡してしまった、というわけだ。

「…ごめん、皆…。」
「気にすんな、円堂!俺がすぐに取り返してやるよ!」

頼もしい染岡くんの言葉に勇気付けられた雷門が、もう一度攻めあがる。何としてでも2点、もしくはそれ以上をもぎ取っていかなければ、勝てない。

***

そこら中を舞う土煙。相手方のゴールの前で起こっていたはずのそれが、何度も何度もやることによって雷門のフィールドにも広がってきていて、視界が悪くなっている。
そして、その土煙がシュートの行方を隠していた。

先程から打ち込まれるシュートのどれひとつとして入らないことに雷門側は焦り、逆に秋葉名戸のほうは優勢に湧いている。
ことごとくシュートが入らないのをゴールで見守りつつ、唇を噛む。…もどかしい。
確かにゴールの中心に向かってシュートは打ち込まれているのに、どうしてか全く入らない。

「何故入らないんだ…絶対に入っているはずなのに…!」

傍らから一郎太のもどかしそうな声が聞こえてきて、もう一度ゴールを見据える。
そして、その時、初めての違和感を抱く。…ゴールが、ずれている?
真正面に見えるはずのゴールが、僅かではあるが少しずつ、土煙がはれるたびに微妙に位置を変えている、ような気がする。

…そして、そのわたしの違和感が正しいのだと、この後すぐに判明した。

「シュートを打ってはいけません、染岡くん!」

珍しい目金くんの叫びに動きを止める染岡くん。だんだんとはれてゆく視界の先に見た光景に、わたしは思わず目を見開いた。



 


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