相変わらず無表情を貫くあちらさんのキャプテンとエースストライカー…杉森くんと下鶴くんを睨みつつ軽く瞑目して深呼吸する。
落ち着かないと。今一番にやらないといけないことは、この人たちをここから追い出すことだから。

「…勝負は、やってみないと判らないものです。こちら側の必殺技のデータが漏れてしまっているなら、もう十分でしょう?帰ってください。はっきり言って邪魔です。」
「勝負…?これは勝負なんかじゃない、害虫駆除だろう?」
「害虫…!?」

無表情のままそんな事を言い切られて、流石のわたしもかちんとくるどころか声を荒げてしまう。さっきから何なんだこの人たちは。
わたしの話は無視をするし、挙句わたし達を害虫扱いなんて。
害虫呼ばわりされた皆は当然怒り、口々に不満を漏らして二人に詰め寄ろうとする。普段は温厚な秋ちゃんや春奈ちゃんまでもが眉間に皺を寄せて口を揃えて怒っていた。

「…皆、落ち着いて。」
「でも、キャプテン…!」

わたしに制された一年生達や、元々気性の荒っぽい染岡くんなどは不満をあげていたけれど。
ここで喧嘩されれば元も子もない、折角出られたフットボールフロンティアへの出場権を手放さざるを得なくなってしまう。…だから、もっと平和的かつ、合理的な方法で。

「…そこまで言うなら、わたし達と勝負しましょう。今、ここで。」
「…何のために?」
「勝手に他人様のチームのグラウンドに入ってきて練習を中断した上にわたしの話も聞かないし、挙句ここまでズタボロに貶した。っていうことは、それなりに自信があるんですよね。ここで証明してください。」

確かに弱小だという自覚はある。だけど、だからと言ってここまで貶される理由にはならない。わたしたちが害虫だというのなら、それだけの実力を此処で示してもらわなければ納得が出来ないのだ。
ところが相手方はそれさえも理解できないのか、不思議そうな顔をした。

「我々はそうすることの必要は無い。」
「そちら側がそうでも、こちら側にはあります。ここまで言われたら流石に引けません。勝負してください。」
「…理解できない。」

こちら側が怒っているというのに、それでもまだ理解できないと困惑した表情の相手方に思わずこちらが脱力する。…何か分かりづらい人たちだなぁ…。

「だから…言葉だけで叶わないとか言われても納得できません。きちんと証明してくださいと言っているんです!分かりました!?」
「なるほど、理解した。」

半ばもう八つ当たり気味に半ギレで対応すれば、ようやくすんなり了承の意が得られた。…もう、本当に疲れる人たちだな!

「…円堂でも怒る事があるんだな…。」
「ああ見えて一回ブッ切れると手が付けられないぞあいつは。」
「そうか…怒らせないように気をつけないといけないな。」

後ろから聞こえてきた豪炎寺くんと一郎太の会話にぴし、と額に青筋が入るのを感じつつも何とか堪えてゴール前に立つ。…二人とも、あとで覚えておいてよね。



 


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