2人は無表情のまま、私達を見下ろして鎮座したまま。
そしてわたし達もまた、それを半ば無理矢理意識の外に追い出すかのように基本練習に励んでいた。
…が、それもあまり長く続かなかった。何故なら、鎮座していた2人が練習しているというのにも関わらず、グラウンドに入ってきたからだ。

「…どういうつもりだ、あいつら…?」
「さあ…?皆、ちょっとタイム!」

訝しげな一朗太の声に返しつつ、わたしは皆に声をかける。皆も動揺しているのか、戸惑いつつも道を開けた。
真っ直ぐ迷い無く歩いてくる2人にわたしも歩み寄っていった。そして、対峙する。

「…初めまして、御影専農中のキャプテンさんにエースストライカーさん。申し訳ないんだけど、今は練習中です。今すぐにグラウンドから出ていってください。」

相手はわたしより大きな中学生、強く出るには少し怖い相手だけれど、今回はそうも言っていられない。他校の練習中にグラウンドに入ってくるなんて、非常識だ。

「…何故必殺技を隠す?」
「今さら隠しても無駄だ。既に我々は君たちのデータを習得している。」

…人の話聞いていたのかなこの人たちは。今わたしグラウンドから出ていってくれって言ったはずなんだけど。
少々むっとして眉間に皺が寄るものの、御影専農中のキャプテン、杉森くんの言葉によってそんなことはどうでもよくなってしまった。

「…結果はDマイナス。君たちが我々に勝つ可能性は…0%だ。」

…何か限りなく失礼な人だな、この人!
相変わらず無表情を貫くあちらさんのキャプテンとエースストライカー…杉森くんと下鶴くんを睨みつつ軽く瞑目して深呼吸する。
落ち着かないと。今一番にやらないといけないことは、この人たちをここから追い出すことだから。

「…勝負は、やってみないと判らないものです。こちら側の必殺技のデータが漏れてしまっているなら、もう十分でしょう?帰ってください。はっきり言って邪魔です。」
「勝負…?これは勝負なんかじゃない、害虫駆除だろう?」
「害虫…!?」

無表情のままそんな事を言い切られて、流石のわたしもかちんとくるどころか声を荒げてしまう。さっきから何なんだこの人たちは。
わたしの話は無視をするし、挙句わたし達を害虫扱いなんて。
害虫呼ばわりされた皆は当然怒り、口々に不満を漏らして二人に詰め寄ろうとする。普段は温厚な秋ちゃんや春奈ちゃんまでもが眉間に皺を寄せて口を揃えて怒っていた。

「…皆、落ち着いて。」
「でも、キャプテン…!」

わたしに制された一年生達や、元々気性の荒っぽい染岡くんなどは不満をあげていたけれど。
ここで喧嘩されれば元も子もない、折角出られたフットボールフロンティアへの出場権を手放さざるを得なくなってしまう。…だから、もっと平和的かつ、合理的な方法で。

「…そこまで言うなら、わたし達と勝負しましょう。今、ここで。」
「…何のために?」
「勝手に他人様のチームのグラウンドに入ってきて練習を中断した上にわたしの話も聞かないし、挙句ここまでズタボロに貶した。っていうことは、それなりに自信があるんですよね。ここで証明してください。」




 


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