後半戦開始。キックオフは野生中から。
のっけからボールは水前寺くんのドリブルでキープされていた。マックスくんがその前に立ちふさがれば、次はバックパスで蛇丸くんへ。
更に蛇丸くんがお得意のスネークショットでゴールを狙ってくるのを、熱血パンチで対抗した。

瞬間、腕と手にびりびりと痺れが伝わり、思わず一瞬顔をゆがめる。でも痛がってる暇なんて何処にも無い。

「痛くなんて…ない!」

勢いをつけてボールを前線に蹴り上げれば火がついたように走り出す豪炎寺くん。対照的に壁山くんは地面に膝をついてしまって、もうジャンプしようという気力さえ見られない。
それでも豪炎寺くんは必死で高く上がったボールに食いつこうとしたが、やはりあちらの方が高さで勝る。ボールはカットされ、野生中のボールとなってしまった。

それから何度も何度もシュートがゴールを狙って打ち込まれる。野生中にして見ればまたとないチャンスだ、当然の事だろう。何度も必殺技を打ち込まれ、ノーマルシュートを打ち込まれる。
そのたびに何とか止めていたものの、段々と疲れによってこちらの対応が追いつかなくなってしまった。

入りそうになったボールを何とか肩で軌道をそらしてゴール脇のラインの外へ押し出せば、安堵の余りそのまま膝を突いてしまう始末。

「円堂!」
「だ…大丈夫!まだやれる!」

心配そうに響く一郎太の声に咄嗟にそう返して立ち上がる。…今わたしがやるべきこと、やれることを、精一杯やる。
それだけを考えて、わたしはひたすらにボールを止めて、また前線へ押し出し始めた。

***

「皆、お疲れさま!壁山くん、豪炎寺くん、シュート凄かったよ!」

野生中との試合は1-0に終わった。最終的にわたしはみんなのゾーンプレスに助けられて得点を止め…壁山くんもみんなのゾーンプレスと豪炎字くんの叱咤に励まされてイナズマ落としを完成させて、一番いい形で勝てた。…本当に、皆でサッカーしたって感じで終わって、とても楽しかった、いい試合だったな。

「あのなあ、円堂…お疲れ様って言うより先にお前手を冷やせ。試合中だから何も言わなかったが、お前、確実に手が腫れてるだろ、ほら。」
「いっ…!?痛い痛い痛い!…っ…一郎太の意地悪ッ!」
「そうか?俺は風丸が正しいと思うけどな。…ほれ。」
「痛いってば染岡くん!分かったよ、冷やすから!」

…何故か一郎太や染岡くんに怒られて、皆寄って集って腫れて痛い手のひらを遠慮無しに力加減しないで握られたり叩かれたりした。…皆酷い、頑張ってたのに。

「…ほら、早く冷やしなさいな。」
「冷たっ…って夏未ちゃん!?」

あんまりにも遠慮のない力に思わず半分涙目になっていると、隣から呆れたような声と溜め息と共に氷袋をわたしの手にきゅっと押し付ける。
意外な行動に唖然としつつも素直に氷袋を受け取った。腫れて熱を持った手にはこれくらいの温度が心地よい。

「ありがと、夏未ちゃん。」
「…別に。貴女があんまりにも子供っぽくて、放っておけなかっただけよ。」

ぷいっとそっぽを向いて執事さんのところへ戻っていく夏未ちゃんは、耳の端がちょっとだけ赤くなっていた。…やっぱり可愛いなあ、夏未ちゃん。

…その次の日、部室に行ったら何故か夏未ちゃんがいて。
「貴女が心配だからわたしもマネージャーになることにしたわ、よろしく。」…と宣言されてしまった。
…まあ、マネージャーがたくさんいて困ることもないだろうし…いっかな!

さあ、次は何処の中学校と勝負できるのかな。



 


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