…結局、試合までにはイナズマ落としは完成せず。
高さの克服も、何となく曖昧な結果に終わってしまった。
救いがあるとすれば、豪炎寺くんの不安定な足場からのオーバーヘッドキックが完成している、と言うことだけ。

…凄く、物凄く不安だけど、今更そんなことも言っていられず。
今現在、野生中の学校があるところにいるわけだ。

「田舎って言うか…ジャングル?…あ、あそこに見慣れないキノコがある。」
「言うな円堂。そしてそのキノコは今すぐ捨てろ。」

近くで手のひらと同じくらいのサイズの紫色のキノコを見つけたから、引っこ抜いて一郎太たちに見せた。若干の呆れの表情や焦ったような顔をしたみんなの顔を見渡す。

「え?食べられないかなぁ、このキノコ。」
「無理!絶対無理だって円堂!」
「やめろ円堂、それどう見ても毒キノコだから!!」
「え!?毒キノコなのこれ!?こんなにきれいなのに!?」
「円堂、よく考えてみろ。店屋でこんな変な色のキノコ売ってるの見たことあるか?店で売ってないものは基本食べられないんだ、覚えておいた方がいいぞ。」
「…分かった。これからは気をつけるね。…でもこのキノコ、折角取ったんだから冬海先生にあげてもいい?お土産って事で。」

わたしの提案に、それまでぎゃあぎゃあ騒いでいたサッカー部の皆はぴたり、と動きを止めて…一斉に頷いた。

「「「「「「「いいと思うぞ(思います)!!!」」」」」」
「…。」
「じゃあこれお土産ね!帰ってから包装して渡しておくね!」

…わたしたちのやりとりを見て、秋ちゃんと春奈ちゃんが苦笑、夏未ちゃんが呆れたといわんばかりの溜め息をついていた。…何でかな?

***

初めて会った野生中のひとは…なんていうか野生的な人ばかりだった。
車を見たのが初めてとか言ってたけど…この人たち普段どんな生活してるんだろう、ちょっと気になる。

「わあ…人がいっぱい。」
「…全員、野生中の応援だけどな。」
「…まあね…ここ野生中だし、当たり前かな…。」

グラウンドに入った瞬間、野生中の応援の人たちがずらりとフィールドを囲んでいた。
一人も味方がいないちょっと居心地の悪いグラウンドを見渡して、苦笑いする。
わたしたちはまだまだ弱小、仕方ないかな。…とそこに、小さな子供3人がわたしたちのほうに向かって手を振っている。

「兄ちゃーん!」
「あれ?あの子…。」
「サ、サク!?何でここに…!?」

壁山くんの弟くんだろうか、三人の中の一人が大きな声を上げてこちらに近寄ってきた。まだ小さいから、多分小学生だろう。

「俺の兄ちゃんは凄いプレーをするんだ!ちゃんと見とけよ!!」
「…凄いプレッシャーが…壁山くん、ファイト!」
「キャプテン〜!!」

…これは壁山くんにとっては大変な試合になりそう…。



 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -