「…円堂、ちょっといいか。」
「豪炎寺くん…?」

何時の間にわたしの後ろに来ていたのか、豪炎寺くんが真剣な顔をして手招きをしていた。
傍らへ寄れば、すっとしゃがみ込んでおもむろに絵を書き出す。

「さっきの秘伝書の事なんだが…こういう事じゃないか?…一人が飛ぶ。もう一人が先に飛んだ一人を踏み台にして更に高く飛ぶ。そしてそのままオーバーヘッドキック。…どうだろう?」
「…成程!それだよ、きっと!そのことだよ!凄いね豪炎寺くん!」

豪炎寺くんの簡略化した絵と、分かりやすい言葉のお陰でイナズマ落としのやり方がわかった。…うん、お爺ちゃん、線画でもいいからもうちょっと分かりやすい絵を傍に付けておいてほしかったな。

喜びの余り目の前にいた豪炎寺くんにタックル…に近い勢いで抱きついたら頭を撫でられた。結構力いっぱい飛びついたのに、流石は男の子だなあ。

何はともあれ、イナズマ落としの極意も分かった、あとは適任者を決めるだけ。

「えーっと…まず、足場の悪い場所からオーバーヘッドキック出来そうなのは…豪炎寺くん、お願いしても良い?」
「俺か?構わないが…。もう一人はどうする?」
「…んー…。」

いくら豪炎寺くんがほっそりした体型だからと言って、やっぱり運動している分、それなりに筋肉もあるし体格も良い…はずだ。
さらにその豪炎寺くんの踏み台になれる人は最低限豪炎寺くんよりも体格が良い人に限られる。
一瞬考えて、ふと空を見上げると、壁山くんが吹っ飛ばされてるのが目に入った。

「…壁山くん!豪炎寺くん、壁山くんとなら出来るよ、イナズマ落とし!」

***

結局、壁山くんと豪炎寺くんに、それぞれ違う特訓をしてもらうことにした。
豪炎寺くんは足場の悪い位置からでも確実にオーバーヘッドキックできるように。
壁山くんは高くジャンプできて、足場の確保ができるように。

豪炎寺くんには染岡くんと一郎太が、壁山くんにはわたしと春奈ちゃんがそれぞれついて特訓をすることになった。…までは良かったのだが。

「…うーん…高いの駄目なんて致命的ですねぇ…。」
「…だね、春奈ちゃん。」

壁山くんはどうやら高いのが苦手みたいだった。…いや、嫌いなのかな。
高所恐怖症克服のために色々…そう、色々やってはみたものの、中々簡単には克服できないみたいだ。まあ本人が一生懸命頑張ろうとしてるから、本番までに何とか出来ると信じてみるしかない。
…そう思いながら試合までの数日間、日々特訓を重ねる毎日だった。



 


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