当然ながら、ラーメン屋さんだから麺をすする音しか聞こえてこない。
三人が黙々と食べている中、不意に一郎太が口を開く。

「…で、新必殺技もなしにどうやって戦うんだ?」
「どうやってって言われてもなぁ…。それが分かんないからわたしも悩んでるんだよ、一郎太。」
「…だよな。」

二人同時の溜め息。やっぱり新必殺技の糸口なんてそう簡単にはつかめない。モチーフ、イメージ。そういったものも無しに必殺技を身に付けようなんて、やっぱり無謀にも程があるみたいだ。

「…お爺ちゃん達…どんな特訓をしてたのか、知ることが出来ればいいのに…。」
「古株さんの言っていた、イナズマイレブンの話か?」
「うん。特訓だけじゃなくて、どんな必殺技を持っていたかも知りたいな。色々参考に出来ると思うんだけど…。」

お皿の上の餃子は既に半分食べた状態で箸をおく。…一通りノートを見返したりしてみたけれど、シュート技の事は殆ど書かれておらず、参考にはならなかったのだ。

「…イナズマイレブンの秘伝書が有る。」
「…え?」

うーん、とうなっていると、突然目の前でキャベツ切っていた店のおじさんが口を開く。…秘伝書?ノート、じゃなくて?

「…それじゃあ、わたしの持ってる特訓ノートは何なんですか…?」
「ノートは秘伝書の一部だ。…お前。」
「は、はい…。」

わたし達に背を向けてお店の事をしていたおじさんが唐突に振り返る。射抜かれてしまいそうになる視線に、思わず身構えた。

「…円堂大介の孫か?」
「…ええ。そうですけど…それが何か?」
「そうか…あの円堂大介の孫娘か…!」

突如豪快に笑い出すおじさんに、少々困惑気味になっていると、突然おじさんはわたしの方へおたまを向けてきた。それに思わず後ろに体重をかけると、そのまま後ろに倒れそうになって…すんでの所で豪炎寺くんに支えられた。

「あ、ありがと、豪炎寺くん。」
「…構わない。」

短くお礼を言ってから、なおもわたしにおたまをつきつけるおじさんを正面から見据える。…一体、何なんだろうか?

「秘伝書は…お前に災厄をもたらすかもしれんぞ。…それでも見たいのか?」
「…勿論です。」

短い沈黙。観察するかのようにこちらを見つめるおじさんの視線に負けじとわたしも視線を返す。随分と時が経ったような感覚の後、おじさんは面白いものを見つけたときのようににやりと笑った。
…と、そこで気が付いた。

「…一郎太、豪炎寺くん。」
「何だよ円堂。」
「どうかしたか?」
「…秘伝書、わたしこないだ夏未ちゃんにもらってたんだった。…えへ。」
「…お前なあぁぁぁ!!」

今度こそおじさんは笑い出して、わたしは一郎太に叱られて。
…まあ取りあえず明日からはこの秘伝書見てから特訓…って事で。許して、ほしいなぁ…。




 


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -