こちらの意識を完全に催眠暗示だと悟らせないように別のところに持っていこうとしていた、ただそれだけ。
「やっと気付きやがったか!だがもう遅いぜぇ!!」
あちらの監督の叫びに、皆が緊張したように身体を強張らせた。
「…遅い?ううん、違う。試合って言うものは…終了の笛が鳴るまで勝敗は決まらないもの!」
わたしもあの監督に負けないくらいの叫び声を上げて少林くんにボールをパスした。
…まだ。まだ、終わったわけじゃない。こんなに簡単に諦められない!
「FWにボールをまわして!」
「でもキャプテン、染岡さんのシュートじゃ…!」
「染岡くんなら大丈夫!染岡くんを信じて!」
少林くんの戸惑いの目をしっかり見て、わたしは更に言葉を続ける。サッカーは、チームプレイなんだ。一人じゃ、勝てない。
「あの監督さんの言ったこと…悔しいけど本当だよ。わたし達はまだまだ弱小の粋をでないよ。…でもね、だからこそ皆が力を合わせるべきだと思うの。」
「…キャプテン…。」
「わたし達が守って、貴方たちが繋いで。そしてあの2人が決める。わたしたちの1点は皆で取る1点!今、隣にいる仲間を信じて!…さあ、行くよ皆!」
わたしの掛け声と共に一郎太が皆に指示を出す。
一気に自陣から敵陣へとパスされていくボール。少林くん達も分かってくれたんだろう、染岡くんにボールを渡してくれた。
染岡くんも相手のマークを振り切って最前線へと切り込んでいく。
そして、因縁とも言おうか、それほど嫌っていた豪炎寺くんの助言も聞き入れたらしく、二人が連携して生まれた新しい必殺技が雷門に一点をそしてもう一点を追加してくれた。
「ドラゴントルネード!とでも呼びましょうかね。」
目金くんの命名の声と、染岡くんたちの歓喜の声が重なって、試合終了。
…何とか、尾刈斗中に勝てたのだ。しかも大逆転勝利で!
勝利を実感した途端、自分が抑えきれなくなって、2人の所へ駆け寄る。そして、思いっきり2人に抱きついた。
「染岡くん、豪炎寺くん!」
「おう、円ど…っておわっ!?」
「っ!?」
染岡くんはびっくりしてあたふたしていて、豪炎寺くんは一瞬息を詰まらせるもちゃんと受け止めてくれる。
「勝ったよ!試合!フットボールフロンティア、出場できるよ!!」
そんな2人に構わず抱きついたまま叫ぶと、固まっていた他のメンバーがわっと歓声を浴びて2人のところに集まってきた。
…出られるんだ、本当に。長年憧れてきた、フットボールフロンティアに!
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