「円堂…。」
「…どうすれば…。」

不安げにこちらの方を見ているDF陣。攻撃に参加している布陣が、もう統率されていない事など一目瞭然なのだろう。
心配そうに声をかけてくる一郎太の声に、思わず唇をかみ締める。…キャプテンなのに、この状況を打開できないなんて…。

結局、今回の攻撃も染岡くんが強引に豪炎寺くんからボールを奪い、何か静止の言葉をかけている豪炎寺くんを無視してゴールを狙った。…が、これも得点ならず。
相手のGKに馬鹿にされ、染岡くんがすっかり自信を失ってしまった。
…しかも、更に悪いことに。

「…てめぇらぁ!ゴーストロックだ!」

地木流監督の声と共に再び尾刈斗中の選手たちがゴーストロックの体勢に入る。
…次で防がないと、もう同点には追いつけない…!

「ゴーストロック!」

再び幽谷くんの手から紫の波動が生まれ、わたしたち雷門イレブンの動きが全て停止する。…しかし、そこでわたしはあることに気付いた。
地木流監督の口から、何か低い声で紡がれる呪文。先程は足が動かないことで頭が一杯で全く内容が聞き取れなかったが、今では鮮明に聞こえてきた。

(まーれー、まーれー、まれとまれ…とまれ…!?)
「まさか…!」

監督の呟いていた呪文が、ちょっとわかりにくくした「止まれ」という暗示だったなら…!

「止めだ!」
「ご…ゴロゴロゴロ、ドッカーン!」

取りあえず恥も外聞も捨てて、頭の中で立てられた一つの仮説を証明するために叫ぶ。…うん、すっごく恥ずかしい。恥ずかしいけど…!

「ファントムシュート!」
「っ、動ける!…熱血パンチっ!」

動かなくなった足が動くことによって、何とか相手側のシュートを止めきった。瞬間、駆け寄ってくる一郎太、壁山くん、影野くん。その他の人たちも、完全に動けるようになったみたいだ。…よかった。

「円堂…お前どうして動けるようになったんだ!?」
「うーん…多分、あの監督の呪文や尾刈斗中のメンバーのフォーメーションによって生まれた催眠暗示が解けたからだと思う。…恥ずかしかったけど、叫んで良かった。」
「じゃあつまり、キャプテンが突然叫んだのって…。」
「止まれ、っていう暗示が掻き消されるかなーと思って。」

単純だけれど、一番効果的。暗示の声が聞こえさえしなければ、かけられた暗示がとけてしまう。
…なるほど、道理で試合の前に監督さんが挑発してきた訳だ。




 


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