試合は明日。だから皆に十分休むように伝え、その日は春奈ちゃんが持ってきてくれたビデオを見た後直ぐに放課にした。
わたしはと言えば、いつも一郎太と帰ってるから、そうしようかなと思ってたんだけど…何か用事があるみたいだから、遠慮して一人で帰ろうと帰路についていた。

夕暮れを見つつ溜め息を吐く。…結局、あれから染岡くんはずっと不機嫌だった。
豪炎寺くんへのライバル意識が強すぎて、チームに入ってくることが納得できないんだろう。…でもチームとしてはそれが一番の策ではあるのだ。

悪いけれど、目金くんは本人が言うほど運動が出来ない。…いや、全く出来ないかな。女子のわたしより体力が無いなんて、まずもう駄目だと思う。そこに豪炎寺くんが入ってきてくれるなら、目金くんをベンチにして、取りあえず動けるメンバーでスタメンを組める。

「…一番チームのためにはなるんだけどな…。」
「何がだ?」
「ふぇっ!?」

突然後ろから声をかけられて思わず変な声を出してしまう。恐る恐る振り返ってみると、逆にびっくりした豪炎寺くんの姿があった。

「…何だ、豪炎寺くんか…。驚かせないでよ…。」
「いや、悪い。ふらふらしてて危ないなと思って声をかけたんだが…。」

苦笑しつつも一緒に帰らないか?という彼の言葉にわたしも頷き、隣に並んで歩き出す。歩調を緩め、わたしに合わせてくれているみたい。…前から思ってたけど、豪炎寺くんって意外と紳士だよね。

「今日はごめんね、染岡くんが…。」
「円堂のせいじゃないだろ。」
「…チームの雰囲気を取り持つのも、キャプテンの仕事の一つだもの。折角来てくれたのに、いきなり悪くなっちゃったし…。染岡くんを上手く落ち着かせられなかったし。」

彼はどうすれば納得してくれるのか、いまひとつ分からないところでもある。明日試合なのに、どうするべきなのだろうか。

「…俺はいつもの通りやるだけだ。もし何かあったら指示でも出してくれ。聞いて考えて、プレーするように心がけるつもりだ。」
「…うん。」

低く落ち着いた声音で諭すように告げる彼に、頷くしか出来ない。
そして決定打に一言。

「…あと、後ろは任せた。」
「…ん。」

…そんな事言われたら、頑張るしかないよね。



 


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