「オラアアアアッ!!」
「わっ!…染岡さん、今のファールですよ〜!」

何はともあれ、取りあえず試合相手も決まったのだし、と言う事でいつもの河川敷で練習を開始する。…までは良かったんだけど。

「染岡くん!落ち着いてプレーして!」
「っ分かってるよっ!」
「…全然わかってないじゃない…。」

何だか、染岡くんのプレーが荒い。ラフプレーとか、そんなんじゃなくてとても荒い。試合であればファールものだ。それも、味方のボールを奪ってシュートを決めようとする。…いつもの染岡くんらしくない。

「どうしたのかな、染岡くん。何か変ね。紗玖夜ちゃん、心当たりある?」
「んー…。もしかして、焦ってるのかなぁ?」
「焦ってる?何に対して?」
「うーん…必殺技が無い自分に対して、若しくは豪炎寺くんへのライバル意識…みたいなものかなぁ、とは思ってるんだけど…。」

勿論、染岡くんが荒れてるのにも何となく見当がつかなくもない。…多分、彼は嫉妬してるんだと思う。あの帝国との試合でわたし達に1点をくれた、豪炎寺くんのシュートや、その才能に。
ミーティングをしているときにちらほら出てきた、一年生たちからの声。
それは、豪炎寺くんがもう一度わたし達と一緒に試合してくれないのか、というものだった。

確かに、彼らの気持ちも分からないでもない。彼は存在自体が異彩を放つ。つまり、自陣にいてくれるだけで安心できる存在であるのは間違いないのだ。
けれど、同時に染岡くんの気持ちも分からないでもない。彼が、雷門のストライカーであることに変わりは無い。なのに、突然試合中に現れて、あっさり一点入れて去っていた彼に、何処か納得できない、というよりも割り切れない感情があるのだとも思う。

…まあだとしても、こんなに荒れたプレーをされては他人の練習を妨げることになるのは間違いなのだけれど。

「…試合の前にちゃんと片付けておかなきゃいけない問題も山積みみたい…。」
「あはは…。大変だね、紗玖夜ちゃん。」

はぁ、とドリンクを片手に溜め息を吐いたわたしに、秋ちゃんが苦笑を漏らしつつタオルをわたしてくれた。
その日の部活は、結局染岡くんは荒れっぱなしだった。…どうしようかなぁ、この状況。



 


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -