ヘトヘトに疲れて、弱音を吐いている部員を何とか秋ちゃんと一緒に励まし、所々痛む身体に鞭を打つ様にわたしは後半が始まる少し前に自分のポジションへと戻る。
先ほどまで、秋ちゃんと新聞部の音無さんに必死になって休んでいるように言われていたが…休めるわけが無い。
わたしは仮にもこのチームのキャプテンで、GKなのだ。最後の砦として、ここを守らなくてはならない。

ともすれば上がりそうになる息を必死で抑える。動悸が激しくなり、目の前が偶にちかちかと点滅して見える。
…本音を言えば、わたしだって皆と同じように怖い。諦めたくなってしまう。…でも、それはきっと自分に負けてしまうことだ。背を向けたら、負けだ。そんなの。

(死んでも、嫌。)

自分の中に僅かに宿る意地、若しくはちっぽけな矜持かもしれない、それが全力で諦めることを、怯えることを拒否している。…まだ、倒れるわけにはいかない。
すっと視線を前にやれば、心配そうにこちらを見ている一郎太がいた。何か言いたげで、でもそれを堪えているような、そんな顔。

…ごめんね、心配かけて。お説教は後でちゃんと受けるから。だから、まだここに居させて。

そんな意味をこめて見つめ返せば、彼は諦めたように首をふると自身も帝国陣へ向き直る。―さあ、後半戦が始まる。

***

後半のホイッスルが鳴って、帝国からのキックオフ。
あっという間に自陣に上がってきた彼らは様々な必殺技でわたし達を吹き飛ばし、或いは地に叩き伏せ、…そして、鬼道くんにボールが渡った。
今、ゴールの前に居るのは、わたしだけ。

「いくぞ…デスゾーン、開始!」

鬼道くんの号令を合図に、小さい男の子と佐久間くん、そして寺門くんが飛び出して三人がボールの回りで回り始める。…あれは、三角形…?
空中で回り続ける彼らの三角形が、だんだん狭まって、ボールの周りにエネルギーが凝縮されてゆくのが見える。…これは、まずい…!
急速に収縮したエネルギーがこちらに向かって放たれるのを見ながら、心臓の音が早くなっていくのが聞こえる。金縛りに会ったかのように、身体が動かない、動けない。
動かなければ、取らなければ。そう思うほど、がんじがらめに縛られているように。

「っ…きゃああぁぁっ!!」
「っ…円堂っ!」
「「紗玖夜ちゃん(さん)!!」」

鋭く突き刺さるような痛みに、身体ごとゴールを決められたのだと悟る。一郎太の声と、秋ちゃんと春奈ちゃんの声が遠くに聞こえる。
視界の点滅が激しくなり、身体をもたげようとした瞬間に走る嘔吐感に思わず息を詰める。…限界、が近い。

必殺技を多く使われ、成す術も無いまま試合が進んでいく。
あるものは飛ばされ、あるものは倒れ伏せて。その間にどんどん点が決められていく。
再び決められたシュート、もう止めきれずにあえなく地面に倒れるわたしの耳に、うっすらと鬼道くんの焦ったような声が聞こえてきた。

「出て来い…、早く出て来いよ…!さもなければ、アイツ…最後に残ったあいつを…!」

声と共に、再び身体に鋭い痛みが走る。また、ボールをぶつけられたのだろう。
体重の無いわたしにとっては、それは凶悪な重さのようなもの。今度はゴールポストに直撃させられた。

「っ…う…。」

もう、うめき声にも似た声しか出せず、立ち上がろうにも足に力が入らない。何とかして立ち上がろうと身体を起こした瞬間。

「…円堂ッ!!」

わたしに向かって放たれたシュートを、自分の身体で受け止め、吹っ飛ばされる一郎太の姿が目の前に顕わになった。



 


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