…だけど、流石は王者帝国学園。

「…何っ!?」

彼は軽々とジャンプしてそのボールを防いでしまった。
そして勢いよくそのボールを鬼道くんの足元に投げて叫ぶ。

「鬼道!俺の仕事は…ここまでだ!」

ころころと転がっていくボールを足で止めて…鬼道くんは一瞬申し訳なさそうにわたしに笑いかけると…一転、不敵な笑みを浮かべながら言い放った。

「…始めようか、帝国のサッカーを。」

ぞくり。
その笑みは、とても不気味で怖くて、わたしに一瞬の戦慄を与えて止まなかった。

直後、鬼道くんは勢いよく寺門くんにパス。そのまま寺門くんがシュートを打ってきた。背筋を走った冷たいもののせいで一瞬反応が遅れるものの、わたしも両手でそのシュートを受け止める。
…やっぱり、帝国のFWの脚力は、そんなに生易しくは無かった。
何とか止めたものの、腕に痺れを感じさせるほどだった。…手ごわい、な。

「…あいつ…俺のシュートまで…!」

寺門くんを始めとする帝国陣が騒ぐのも気にせず、わたしはそのまま無言でボールを蹴る。…ロングシュート、だ。入ってくれればいいのだけど。

「…っ。アイツ、何でFWやMFじゃないんだ!?」

遠くで源田くんが何か言ったようだが、残念ながらわたしには聞こえない。わたしの蹴ったボールは誰の手にも触れず真っ直ぐに帝国のゴールまで飛んでいったものの、流石にあっさりとめられてしまったように見えた。

「…やっぱり、こんなに距離があったら駄目か…。」

***

それからの試合はほとんど帝国が成すがままだった。
雷門サッカー部は散々ボールをぶつけられ、体力を消耗させられるだけ。ボールは常に帝国の人の所でキープされ続け、触れる隙さえも無い。
わたしはといえば向かってくるシュートを何本も何本も止めて、腕に…と言うより手に感覚が無くなってきていた。未だに点だけは与えていないものの、このままでは確実に点を許してしまいかねないほどに追い詰められていた。

何とかしなくては、と思った瞬間ホイッスルが鳴る。
前半終了。0-0でこのときは終わった。…この時はまだ、これくらいで済んだのだ。





 


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