わたしがシュートを止めたことで起こった沈黙。それは結局、壁山くんの一言で破られてしまった。

「キャ、キャプテン、オレ、オレ…トイレ行ってくるッスーーー!!!」
「ええええ!?壁山くん!?」

がたがた震えていたかと思えばそんな事を叫んでダッシュで(あれはきっと一郎太とおんなじくらい速かった。いつもあれくらい本気になれば良いのに…)校舎の方へ行ってしまった。
唖然としていると鬼道くんが僅かに呆れが混じった声でどうするんだ?と問いかけてくる。

「…見たところ逃げたようにも感じたが?」
「…ごめんなさい、もうちょっと待ってもらえませんか?」
「構わない。ただし、なるべく早くな。」

その言葉に頷いてわたしは秋ちゃんの所で壁山くんが来るのを待とうとした。
…が、それを冬海先生に止められる。…探しに行けって言うんですか…。

***

結局、壁山くんを探しに行くこととなり、サッカー部員はあっちこっちに散らばり始めた。…わたし以外は。
わたしは何故か一郎太を始めとする部員と秋ちゃんに止められたため、一人グラウンドに残ることとなった。
…うん、わたしも探しに行きたかったよ皆。とっても気まずい。
帝国の人たちはわたしに興味があるのかちらちらと視線を送ってくるし、特に恐らく同じGKだろうと思われる大きな男の子なんてその興味を隠しもせずに凝視してくるから正直いたたまれない。
凝視するくらいならなんか誰か話しかけてよ…!

「…皆、そんなにじろじろ見るのはやめてやれ。少し不躾だぞ。特に源田、凝視してやるな、試合する前から変な意味で緊張させてどうする。」

わたしがあまりにもその視線に辟易しているのがわかったのか、鬼道くんが皆を制するように声をかけた。…そうか、あのGKの子は源田くんっていうのか。

帝国の人たちが鬼道くんの言葉ですっと視線をずらすのを感じて逆に彼らの方を見ると、ふと源田くんと目が合った。彼は精悍な顔の割には優しそうに目じりを下げるとこちらの方に歩いてきた。

「悪かったな、じっと見て。俺は源田幸次郎。よろしくな。」
「あ、ううん、大丈夫。よろしくね源田くん。」

何だろう、鬼道くんは敬語を使わなければいけないようなオーラが出てるのに、源田くんは何となく優しそうで親しみやすい人みたいだ。差し出されたわたしよりも遥かに大きな手と握手を交わしながら、少しだけ安心したような心持にさせられた。

「手、小さいな…よくこれでさっきのシュートを止めたな。」

彼は関心したように、というよりも興味津々といった風で握手をしたわたしの片手をとり、珍しいもの見るような感じで自分の手と大きさを比べたり、もう一度握ってみたり、果てはグローブを外してわたしの手の感触を確かめるように触り始めた。
最初のあたりは驚いたものの、悪意は感じられないので放っておくことにする。




 


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