「…啖呵を切って出てきたものの…どうしよ。」

部室を後にし、取り敢えず直ぐにスポーツ出来そうな運動部がいるグラウンドに歩きつつ、ポツリとこぼす。
自分で言うのも悲しいが、わたし達サッカー部は最もという名前がつくくらいの弱小チームなのだ。そして相手は最強と名高い帝国学園。
…うん、こう考えるだけで部員集まらなさそう。
でも。

「ただ黙って諦めちゃうのは…一番嫌いなんだよね〜…。」

諦めてしまうと言うことは、自分から逃げてしまうと同じことだと思う。そんなの、一番みっともないから絶対したくない。

「…やっぱり、出来るところまでちゃんとやろう!」

自分を元気付けて、わたしはとある場所へ足を向ける。
頼りになりそうな人と言えば、今のところ彼しかいないから。

***

「一朗太!」
「ん?…って、円堂!?何でここに…。」

頼りになりそうな人…幼馴染みの風丸のいる陸上部の所に向かう。
丁度走り終わり、息を整えているらしい、何だか息が荒かった。

「お前…どうしたんだよ?こんな所に来るなんて…。」

訝しげな顔をして訪ねてくる一朗太に苦笑しつつ口を開く。

「うん、実は一朗太にお願いがありまして…。」
「お願い…?珍しいこともあるもんだな。良いぜ、言ってみろよ。」

流石一朗太、何か発言が男前だ。まあそういう所が頼りにされるんだろうけど。

「あのね、一朗太にも一緒にサッカーやってもらいたいの。」
「…は?サッカー?」
「そう、サッカー。」

不思議そうに首を傾げる一朗太を見て内心溜め息を吐く。…まあそりゃあ、突然そんなこといわれたらびっくりするよね、普通。

「それは…サッカー部に入れって事か?」
「そうだね…平たく言えばそうなるかな。あくまで助っ人として、で良いの。とにかく人集めないと話にならないから…。」
「…何か訳アリだな?」
「…それが…。」

難しい顔をした一朗太に一通り今までの事を話す。一連の流れを話終わった後、一朗太は更に難しそうな顔をして腕を組むと、申し訳なさそうな声で悪いが、と切り出した。

「まだはっきりと答えが出せないな。
「そう…。」

その返答に思わず項垂れると、今度は慌てたような声が聞こえた。

「いや、まだ決めた訳じゃないって事だぞ!?…まあ、考えとくよ。」
「うん、…お願いします。」

もう一度頭を下げると、一郎太が頭上で苦笑した気配がして、その後柔らかく頭を撫でられる感覚がした。
この手…小さい頃から変わらない、優しい手。どこか切羽詰っていたわたしは、この手の温もりに少しだけ救われた気がした。



 


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