「円堂、君と仲良くなったっていう記念に、一緒にやりたいことがあるんだけど…どうかな?」

少しだけ秋ちゃんとお話しした後、一之瀬くんからもちかけられた“やりたいこと”。それは以前、対千羽山戦の為に必殺技を探さなければ、と思っていた頃に秋ちゃんと土門くんにやってみないかと言われたトライペガサスと言う必殺技。

土門くんとわたし、あとは一之瀬くんでそれを完成させたいのだ、とにこやかにそう言ってきた彼の申し出を、わたしが断るはずもなく。何処と無く苦笑気味の土門くんを巻き込んでトライペガサスの練習をしはじめた。

「この技は、3人が一直線に走って、その3つの直線を上手く1つの点上に集めることによって初めて完成する技なんだ」
「へ〜…土門くん、一之瀬くん普通に言葉で説明できてるよ?」
「あー…それはまあ、一之瀬だからだよ。それに俺、口で教えられたままを頭で考えてやるんじゃなくて、体動かしてから体に叩き込むタイプだからさ」

以前は土門くんが口で説明してくれようとしたけれど、出来なかったのを一之瀬くんがあっさり簡潔に教えてくれた。ちらり、と横目で土門くんを見つつも冗談混じりでそう言えば、彼もそれが分かったのだろう、おどけたように肩を竦めてそう返してくる。
その様を交互に見て、一之瀬くんは笑う。

「2人とも、ホント仲良いなあ。俺、妬いちゃいそうだよ」
「おう、妬け妬け」

軽く冗談を言う事で場の雰囲気を和ませたり、一之瀬くんは柔軟な人らしい。秋ちゃんと土門くんを足して、2で割った感じの人。

「じゃあ…早速やってみよっか!わたし、頑張るね!」
「うんうん、円堂は素直で可愛いね。そう言うところ、俺は好きだな」
「ありがと、一之瀬くん。わたしも一之瀬くんのこと好きだよ!」
「うおーい、俺は置いてけぼりかー?円堂、俺はー?」
「もちろん土門くんも好きだよ!」

グラウンドの真ん中でそんな冗談を交わして、練習する。その時間があまりにも短く感じられて、残念に思う。…一之瀬くんは明日の夕方の飛行機で、向こう…アメリカに帰ってしまうらしい、時間はあまり多く無い。

けれど、トライペガサスはそう容易に出来る必殺技ではなかったようで。中々成功しないまま時間だけが刻々と過ぎて行く。

「…ごめんね、またわたしのタイミングがあってないみたい…」

幼い頃にこの技を習得済みの2人のタイミングはぴったりと合うけれど、わたしがそのタイミングに合わせきらないのが原因だ。わたしの後ろの線だけが1つの点に交わらないまま。

「気にすんな円堂、俺らだって昔しっくはっくしてるから出来るようになっただけだからさ」
「そうそう、まだ時間はあるからしね。さ、もう一回!」
「…うん!」

二人に代わる代わる励ましてもらいながら何度も何度も繰り返し練習を続けた。…けれど、結局その日にはトライペガサスを完成させることは出来ず。その練習を明日に持ち越す事を決めて、その日の練習はお開きとなった。




 


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