仲が良さそうに3人がベンチに座って話しているのを遠目から眺めつつ、練習を続ける。
…いいなあ、ああいう幼馴染…小さい頃から一緒にサッカーしてたなんて、いいなあ。今度秋ちゃんを練習に誘ってみよう。そんな事を頭の片隅で考えつつ、一之瀬くんを呼んでみる。思い出話にひと段落着いたなら、一緒にサッカーをやりたいという旨を伝えれば、彼はとても楽しそうに笑って了承してくれた。

彼のプレーはなんていうか…軽やかな感じがした。軽快な舞を舞っている様な、そんな感じ。同じMFの鬼道くんよりも身軽で、そのテクニックは彼と同等か、若しくはそれ以上。シュートの力も強いし、ボールコントロールも上手だった。…何回もゴールを割られた事は、凄く悔しいけれど。

「もう…凄いなあ、一之瀬くん。直ぐにゴールされちゃうよ、秋ちゃん…」
「ふふ…でも紗玖夜ちゃんも粘ったね。最終的に止められるようになったじゃない」
「これ、試合だったら終わってたよ…負けてたかも。ホント、あんな人とサッカーやってたなんて、秋ちゃんが羨ましい」

休憩中に秋ちゃんから渡されたドリンクを口に含みつつそう言うと、彼女はとても嬉しそうに笑っていた。秋ちゃんは本当に一之瀬くんの事、大好きなんだろうなあ。土門くんと話しているときの秋ちゃんも、優しくて柔らかい表情をしているけれど、一之瀬くんに対する態度は土門くんに対するそれとは少し違う気がした。暖かくて、柔らかくて、優しくて…何か、“特別”を思い起こさせるような、そんな感じ。

「ねえねえ、秋ちゃん。秋ちゃんにとって、一之瀬くんは“特別”?」
「…へ?え、…何、どういうこと?」
「んー…何かね、土門くんと一之瀬くんに対する態度?というか何と言うか…何か違う気がするの。…気のせい?」
「…あはははは…気のせいじゃない、かな?」
「そうかなあ、気のせいなのかなあ…じゃあ、秋ちゃんにとっての一之瀬くんって、わたしにとっての一郎太みたいなもの?」

途端にぎこちなくなった秋ちゃんの笑顔に少しだけ興味が沸いて、少しだけ追求してみる。おんなじ幼馴染、という関係の男の子。秋ちゃんは、どう思ってるんだろうか?

「わたしは一郎太の事大好きだよ。秋ちゃんは、わたしが一郎太の事大好きって言う気持ちとおんなじくらい、一之瀬くんの事好きなのかなあ?」
「…うん、多分ね」

わたしの言葉に同意して、ほのかな笑みを浮かべる秋ちゃんは、何だかとても優しくて柔らかかった。そして、その笑顔に思わず見とれていたら、彼女に苦笑されてしまう。

「…でもね、紗玖夜ちゃん。“そういう”事を私に聞くよりも先に、自分の周りの人…例えば風丸くんとか、豪炎寺くんとか、鬼道くんとか…そういう人達の気持ちをまず考えてみたらいいと思うよ?」
「え?いつも考えてるつもり…だけど…」
「…そっか、…紗玖夜ちゃんは自分に向けられるその手の気持ちには鈍感なんだね…」
「?」

秋ちゃんの苦笑が更に深くなるのを不思議に思って見つめた。彼女の言葉には、一体何の意味が込められているのだろうか?



 


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