最後の1点を追加するのはとても楽だったように思う。今思えば、千羽山のGKさんも多分ショックだったんだろうな。今まで無失点だったのが、1点入れられてしまったのだから。それが原因でか、簡単に染岡くんのドラゴンクラッシュが決まって、2-1、わたし達の勝ち越しが決定した。…準決勝進出決定だ。

夕日が綺麗に輝く鉄塔広場の上で、タイヤと向き合いながら今日の事を思い返す。…本当に楽しかった。でも、やはりわたしももっともっと成長しなければならないということも浮き彫りになった気もする。…あの最初のシュートを止められなかった、先制を許してしまったから、試合があそこまで不利になった、とも考えられるから。
そっと少しずつタイヤを強く押して、いつもの通りの勢いを作る。そして、それを止めようとして…後ろに弾き返されて、背中から倒れてしまった時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「…やっぱりここにいたか」
「円堂…」
「あれ、…豪炎寺くんに鬼道くん?」

地面に仰向けに倒れたまま、彼らを見れば二人とも微苦笑したままわたしを起き上がらせた。背負っていたタイヤもあっさりと手際よく外される。そして何も言わないままベンチに座らされてしまった。

「お前、よくあんな練習しているのか?」
「え?ああ、タイヤの事?うん、いっつもやってるよ」
「いつもって…周りは止めないのか?」
「んー…最初の頃はよく一郎太に止められたりしてたけど…今ではもう何も」

ベンチに座ったと思ったらすぐに隣に腰掛けた鬼道くんがそう聞いてきた。そういえば、あの練習を始めた頃は本当に色々な人に止められたものだ。一郎太は止めようとしてお母さんにまで言っちゃったときもあったっけ。それでお父さんお母さんにも怒られて、それでもやめたくなくて、泣きながらこうやってタイヤで練習したこともあった。
最近では漸く止められなくなったけれど…多分それは諦めたからなんだろうな、って思う。実際、何言われてもやめなかったし。

「円堂に止めろと言っても聞かないのがわかったからだろう」
「…うん、多分そうだろうなって思う」

夕日を眺めているように立っていた豪炎寺くんが楽しげにそう口を挟んできた。何処と無くからかうような悪戯っぽい目に、わたしは肩を竦めつつそう頷いた。…否定できないし。

「いつか、お爺ちゃんみたいなキーパーになりたいの。女の子は無理、駄目って言われてたけど…やってみなきゃ判らないもの、そんな事。やらない内に諦めちゃうなんて、絶対したくないから」
「そうか。…そうだろうな」

苦笑しつつ、鬼道くんは頷いた。まるで判るよ、と言うように。その何処と無く受け入れてくれているような気配に安心して、わたしは隣に座っている鬼道くんに目線を向けた。



 


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