最後の五分。あとこの中で点が入れられなければ、雷門は負ける。でも、そういう危機的状況だって、これまで何回も何回も経験してきた。そして、学んだ事が一つある。
諦めなければ、信じ続ければ、必ず道は開けると言う事。今までずっとそうだった。…だから、もう今は、勝利を信じて全力でプレーするだけ。

もうゴールを守るだけでは駄目だと判っていたので、わたしも皆と同じようにあがる。…チャンスがあれば、わたしも攻撃に参加する。何としても、もう1点、絶対に入れなければならないから。
半田くんからのコーナーキックで試合が動く。半田くんからマックスくんへ、染岡くんへとボールを渡しながら攻めていく。…けれど、惜しくも点にならない。
あともう少しと言う所で阻まれたり、ゴールポストに当たったりと点にはならないなりに、気迫が伝わっていたように思う。…そして、そんな中で半田くんから鬼道くんへ、ボールが渡った。

その次の瞬間、鬼道くんが千羽山の三人に囲まれてしまった。必殺技、かごめかごめ、だろうか。どうしようか、と迷っているような鬼道くん、そして、迷わず鬼道くんの所に走り出した豪炎寺くんを見て、わたしも走り出した。…鬼道くんの所へ、と。

「鬼道くん!」

走りながら、鬼道くんに声をかけると、直ぐに彼も状況を判断したらしく、ボールを上に蹴り上げた。蹴り上げられて勢いづいたボールに、更にわたしと豪炎寺くん、そして下からジャンプしてきた鬼道くんのキックが同時に決まる。
そのボールは独特の光を放ちながら千羽山のゴールに迫り…そして、僅かな拮抗の後、無限の壁を打ち砕いて、ゴールネットを揺らした。点を入れたという証拠のホイッスルが鋭く空を切る。
暫くの間、わたし達の間からも、会場からも音が漏れる事が無く、沈黙が続いた。…が一瞬後、直ぐに空が割れるかというほどの大歓声が客席を支配する。

無失点記録がやぶられた、とアナウンスの人が言っているのを尻目に、わたしは直ぐ近くに居た鬼道くんと豪炎寺くんに思いっきり抱きついた。心の底から嬉しさがこみ上げてきて、もう何だか止められない。…本当に、嬉しい。

「やった!やったよ!あともう1点入れたら勝てるよ!」

2人に抱きつきながらそう叫ぶと、彼らはわたしの耳元でふっと笑いつつかわるがわる肩を叩いてきた。

「そうだな。あともう1点だ」
「…早く離れろ円堂、時間は無いんだぞ」
「あ、そうだった。…じゃあまた後で!後で皆にぎゅーってしようね!」
「…俺たちもやるのか?」
「うん。わたしと鬼道くんと豪炎寺くんで皆にぎゅー!って。楽しそうでしょう?」
「…楽しい、か…?」

やっと1点追加できたお祝いに、と言うと、二人ともが微妙な顔をして明後日の方向を向いてしまう。…あれ、楽しそうなんだけど…駄目だったかな?




 


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テーマ「人外ファンタジー」
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