※鬼道視点

俺の考えが間違っていなければ、染岡の1トップで点が入れられる筈だったが…どうも相手を甘く見ていたようだった。隙を作っても作っても、相手が素早く順応してしまって、どうにも効果が見受けられない。選手にも焦りと疲れが出てきてしまっている。…それに、円堂や豪炎寺は俺を雷門の一員としてあっさり認めてくれたけれど、雷門の全員が俺を受け入れてくれた訳ではないことも、既に分かっている。…まあ、それは仕方が無いのかもしれない、今まで自分がしてきたことを考えれば。
けれど、それでも円堂は俺を笑顔で受け入れてくれたし、豪炎寺も俺の復活への道しるべを作ってくれている。それに、何としても応えなければ。

そんな思いと共にフィールドを駆ける。こんな所で立ち止まってはいられないのだ、自分は。世宇子中へのリベンジをするためにも勝たなければならない。
…しかし、思いだけではやはり点を入れることは叶わず。炎の風見鶏も、イナズマ1号も全く通用しなかった。どうすれば、いいのだろうか。

唇を噛んで、思わず俯く。周りの選手にも諦めのムードが漂いはじめてきた。…このままでは確実に、負けてしまう。…と、その時、彼女の凛とした声が静かに響いた。

「皆、どうしてもう諦めようとするの?まだ試合は終わってないよ」

顔を上げれば、真っ直ぐに皆を見ている、茶色の瞳がそこにはあった。諦めも無く、ただただ純粋に勝利を信じている、強い光を持った瞳。…俺たち帝国と最初に試合したときと、全く変わらない光。

「必殺技が無い、なんてそんな事無い。…だってわたし達の必殺技は“最後まで諦めない事”だから!今までだって、そうやって戦ってきたんだよ。…試合終了のホイッスルが鳴るまで、勝利の女神がどっちに微笑むかなんて、分からないんだから!」

高くて、けれど力強い意思の込められた言葉に、周囲の士気が再び高まるのを肌で感じる。どんなに窮地に追い込まれていても、どんなに絶望的な場面でも。…きっと雷門がここまで勝ち上がってこれたのは、彼女の持つ強い意志のおかげでもあるのだろう。
だからきっと、豪炎寺は彼女に背中を預けてみないかと言ったのだ。ゴーグル越しでも、まだ眩しく光っているような、そんな気配に思わず目を細める。

「最後まで諦めないこと…それが、わたし達の必殺技で、わたし達雷門のサッカーだよ!…ほら、まだもうちょっと時間はあるんだから、点入れていこう!」

彼女の持つ強さ…光。それはきっと、この先も俺たちを勝利に導いてくれる。そう確信を持った瞬間、俺は腹の底から声を上げていた。

「よし、あと五分!全力で攻めるぞ!」

そして、心底このチームの中でサッカーがやれてよかった、とも思ってしまった。



 


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