鬼道くんが入る代わりに、宍戸くんがベンチに行く事になった。…仕方ない事だ、鬼道くんが入る以上、11人オーバーにならないように誰かがベンチに行かなければならないことは分かりきっていた事。…可哀想だけれど、ここはちょっと我慢してもらわなければならない。

「…宍戸くんの為にも、頑張ろうね」
「ああ、任せろ」

そっと人知れず、鬼道くんに囁くと彼は意味ありげな顔で笑いながらそう返してきた。…帝国の司令塔としてずっとチームを纏め続けてきた鬼道くんのゲームメイク力。わたし達雷門をどんな風にメイキングしてくれるのだろうか?

***

前半が始まってから約十分間は、まるでパスが通らず、満足に敵陣に切り込んでいく事ができない状態に陥っていた。それぞれのパスに強弱がばらばらになっていて、ボールが見当違いのところへ飛んでいくのを何度も見送らざるを得なかった。そして、ちょうど十分経とうかと言う時。

「シャインドライブ!」
「…まぶし…っ!」

強い輝きと共にボールがこちらに向かってくるのを、意識の先では認識できた、がしかし、眩しくて目が開けていられず…。気付いたときにはもう既に1点入れられてしまっていた。…このシュートが続けてきたら、絶対に止められない…。

「ごめん!止められなかった…!」
「落ち着け、円堂。まだ始まったばかりだ」

一言、謝罪の言葉を口にすれば、鬼道くんが落ち着いた面持ちでこちらを見てそう言う。驚いた顔でそちらを見ていたら、唐突に鬼道くんはマックスくんと栗松くんを呼び寄せて、なにやら指示を出し始めた。…もしかして、今までの動作で何か作戦を思いついたのだろうか?
ふい、と2人をあっさり開放した彼は一度、響木監督に目をやると、直ぐに再びポジションについた。その動作が少しだけ訝しくて、思わず首を傾げつつわたしも次なるシュートに備えて構える。…と、少しだけいつもよりも栗松くんの位置が下がっているような気がして、彼に声をかけた。

「栗松くん?もうちょっと前に出たらー?」
「でやんすが、キャプテン…鬼道さんが…!」
「…鬼道くんが…?」

何とあの位置は鬼道くんの指示らしい。ちら、と彼に目をやるとちょうどこちらを向いていたらしい、鬼道くんがにやり、と勝気に笑った、気がした。



 


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