※風丸視点

伊賀島との後半戦が始まる直前に発覚した、円堂の右手の腫れ。皆に心配をかけまいと必死に隠していたようだが…俺には直ぐに分かってしまった。いつもと違うぎこちない動きをしているのが、見え見えだったから。
フィールドに立って、すぐに後ろを振り返る。テーピングしたのを剥がさないように慎重にグローブを嵌めた円堂は、既に気持ちを切り替えて次の攻撃を防ごうとしているようだ。…本当に、彼女らしい。
不意に苦笑が漏れる。そうだ、彼女は一度や二度くらいで簡単に諦めるほど柔な奴じゃない。むしろ男顔負けの根性の持ち主だ。…だが、いくら根性があってもあの怪我ではこれ以上無理をさせるのは禁物だ。これまで必死にゴールを守ってくれた彼女を、今度は俺たちがサポートしなければ。
1点を入れている戦国伊賀島は後半もがんがん攻め込んできた。もう1点取って、勝利を確実にしたいんだろう。

「来るよ!気を付けて!」

円堂の声を聞いてハッとして前を向けば、霧隠がシュートを放ったのが見えた。その一撃は壁山のガードによって防がれる。円堂が壁山を褒める声が聞こえてきた。
そして…その次の瞬間、再び彼女に向かって霧隠のシュートが放たれる。壁山の対応は…間に合わない。次は何としても止めなければ、円堂の手が持たない。
そう思って放たれた土だるまの軌道の先に回り込むが、俺をあっという間に抜かしてゴールまで行ってしまった。
慌てて後ろを見れば、円堂は既にゴッドハンドの体勢になって迎え撃とうとしている。まずい、このままでは確実に失点する…!

「ゴッドハンド!」

土だるまとゴッドハンドの拮抗戦を横目に収めながら、ゴールまで走りあげる。そして、彼女のゴッドハンドが押し負けたのを節目にゴールに突き刺さろうとしていたボールに向かってジャンプした。

「何!?止めただと…」

唖然とする霧隠に構わず、俺はそのまま豪炎寺のいる前線へと駆け出す。…まずは、1点、1点入れれば負けることは無い、そんな思いのまま、前へ。

「行くぞ、豪炎寺!」
「…ああ!」

…焔に包まれた鶏がゴールに突き刺さるのを確認して、一息吐いた。あともう1点追加すれば、必ず勝てる。振り返った先、円堂が嬉しそうにはしゃいでいる様子を見て、そう思った。




 


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