霧隠くんと一郎太の勝負は結局、霧隠くんのチームメイトさんに遮られてどちらの勝ちかと言うことは分からずじまいだった。感想を聞いてみても、肩を竦めて心配ない、と笑うだけ。…まあ一郎太が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろうけど…でも一体何が大丈夫なんだろう?

色々と思うところはあるけれど、取り敢えず自分のポジションについてグローブをはめる。ぐるりとゴール前から観客席を見回すと、ちらほら知った顔が見えた。宮坂くんが陸上部の人達と一緒に並んで座っていたし、鬼道くんは1人きりで座ってフィールドを睨むように見つめている。
…これは、無様な姿は見せられないなあ。
ぱんぱん、と軽く両頬を叩いて気合いをいれると…目の前に構える戦国伊賀島の人達を見据える。

「よし、皆、気合い入れていくよ!」

直後、試合開始のホイッスルが響き渡った。

***

戦国伊賀島中の戦術はとても変わっていて、対応に困ってしまった。流石は忍者サッカーと言うだけはあり、まさに変幻自在、形や型が全く掴めず、雷門側も攻め上がるが攻めきれずにいる。
今も、ドラゴントルネードを放った先から止められてしまったのが見えた。

「あ…また…!あと一歩踏み込めたらいいのに…!!」

ゴール前でもどかしい思いを抱えて前線を見つめる。あともう一歩踏み込みさえすれば、確実に点を入れられることは分かっているけれど、どうしてもそこへ踏み込めないのだろう。…ああ、もどかしい!

「…こういう時は絶対に先取点を取らなくちゃいけないんだ!」

わたしの近くにいた一郎太が前線へと飛び出していく。彼の持ち味の俊足を用いて一気に豪炎寺くんと並ぶ。炎の風見鶏をやる気なんだ、そう思って安心した、その瞬間。

「…伊賀島流忍術、蜘蛛の糸!」
「うわっ!」
「一郎太!!」

服部くんの手から出た蜘蛛の巣の様な糸が出て、一郎太の足を絡め取ってしまう。その反動で一郎太が足を取られて転んでしまった。

…そして、そちらに気を取られてしまったわたしに、霧隠くんが放ったシュートが襲いかかってきた。

「伊賀島流忍術、土だるま!」
「っ…熱血パンチ!」

強い衝撃がわたしの手を襲い…そして、気付いたときには体ごとゴールの中へ吹っ飛ばされていた。

(いたっ…)

ずき、と手首や掌に痛みが走る。咄嗟に左手を庇いながら立ち上がると、真っ先にわたしの目に入ってきたのは、0-1というスコアボード。…しまった、入れられてしまった…!



 


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