出て行った浮島さんの後を懸命に追いかける。―あの人、もしかして、まだ。
曲がり角を曲がると、その先には何かのポスターを見つめる浮島さんの姿があった。…よかった、追いついた。

「浮島さん!…どうして出て行っちゃったんですか!?」
「…君は何かを勘違いしているようだ。イナズマイレブンは…英雄なんかじゃない。…ただの臆病者さ」
「…どういう、意味ですか?」

意味深に、何かを含んだようにそういう浮島さんの言葉が信じられなくて、思わず攻めるような口調になる。…だって、古株さんは確かに伝説のイナズマイレブンはとっても強かったって、言ってたし。鬼瓦さんも、お爺ちゃんが率いた最高のサッカーチームだって、教えてくれたのに。…なのに、どうして。

「イナズマイレブンは…逃げちまったのさ。試合が出来なくなって、サッカーから目を背けてしまった。…表舞台が駄目なら草サッカーだって出来たはずなのに…」

切なそうに、寂しそうに、KFCのメンバーを募集するために貼られたポスターを眺めた浮島さんは一つ、息を落として分かっただろう?と口を開いた。

「…これが、伝説の内側に秘められた正体さ。…イナズマイレブンはサッカーを捨てた負け犬…ってね」
「…なら!どうして雷々軒に来たりしたんですか!?」

あまりにも自虐的な言葉。そんな言葉、なんて聞きたくなくて、思わず声を荒げる。わたしの中には、一つの確証に近いものが感じられていた。…この人、まだきっとサッカーの事、好きなんだ。

「浮島さん、…まだきっとサッカーの事好きなんだと思います。…だから、もう一度サッカーやりましょうよ。監督は、…響木さんは、戻ってきましたよ?だから、次は浮島さんの番だと思うんです!」
「その通りだな。…浮島、イナズマイレブンに集合をかけるぞ。日曜の朝、イナズマイレブンは河川敷に集合だ」
「あ、監督…」

いつの間に来たのか、響木監督がわたしの後ろに立って不敵な笑顔を浮かべていた。いつか、わたしと勝負したときの様な、あの顔で。
彼はゆっくりとわたしの後ろに来ると、わたしの両肩に大きな手を置いて、浮島さんに言い放つ。

「…大介さんの孫娘率いる雷門中と、練習試合をする。見せてやろうじゃないか、伝説を!」
「…え!?それじゃあ…本当に試合できるんですか!?」
「ああ、皆にもそう伝えておけ」
「はい!直ぐにでも連絡します!」

夕日を後ろに、考え込む浮島さん。きっと、またこの人もサッカーに戻ってこられる、…そう、信じてる。…そうだよね、お爺ちゃん。



 


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