一進一退の攻防戦。雷門も帝国も同じ力量で勝負をしているのがわかる。…が、それを僅かな隙に破られた。鬼道くんがまたもボールを奪って寺門くんと佐久間くんと共にこちらに上がってきた。…これは、皇帝ペンギン二号の構えだ。次こそは、止めなければ!

「「「皇帝ペンギン二号!」」」

凄まじい勢いに乗ってペンギンが五羽、こちらに向かって飛んでくるのをゴッドハンドで迎え撃つ。…が、しかし流石にゴッドハンド対策のために編み出された必殺技であるだけはあって、やはりわたしのほうが少し、…いやかなり押され気味だ。

「う、くっ…!」

じりじりと後方へ、ゴールの方へ押し込まれていくのがわかる。スパイク越しに、ざりざりと土を押しのけるような感覚も伝わってきた。―押し込まれる!
思わず目をぎゅっと閉じた。そのまま踏ん張ろうとしっかり足に力を込める。このボールを入れてしまったら、入れてしまったら負けてしまう。それだけは防がなければ…!

「円堂!」

豪炎寺くんの叫び声が聞こえる。今まで一緒に頑張ってきてくれた、皆の気持ちも、一緒に感じる。このボールを止めて、もう1点入れて、全国大会に出場するために…今まで一緒に頑張ってくれた皆のために、わたしはここで点を入れられるわけにはいかない!

必死の思いで両手を重ねてゴッドハンドを強化する。強化することで体のバランスが取れなくなるが、それは二の次だ。強化したゴッドハンドはサイズが若干大きくなり、皇帝ペンギン2号を掴むようにして止めることに成功した。
勢いによってわずかばかりに傾いだ体を自力で立て直し、勢い良く投げる。
そして、ボールが前線に上がりきって、壁山くんと豪炎寺くんが走り出した頃合を図ってわたしもゴール前から飛び出した。―お爺ちゃんの必殺技ノートに書いてあった、イナズマ落としの改良版。今なら、出来るかもしれない!

源田くんの振りが大きくなる。新しい必殺技を出す気なんだろう、そんな事を頭の片隅に捕らえながら豪炎寺くんと壁山くんの2人に次いでわたしも大きくジャンプした。
豪炎寺くんは壁山くんの前から、わたしは背後から上へ飛び上がり、そのまま壁山くんを踏み台にして更に大きく跳躍する。
―そして勢い良く、2人でそのボールを蹴りこんだ!

「フルパワーシールド!!」

源田くんの大きく、激しい衝撃波…先程とは比べ物にならないような大きさの壁が目の前に出現し、蹴りこんだボールはその衝撃波の壁にぶつかった。弾こうとする障壁、そしてその障壁を突破しようとするボール。

「…お願い、入って…!」

空中に投げ出された状態でそれを見つめながら、祈る気持ちで呟く。―そして。
暫くの間均衡を保っていた障壁とボールが、遂に動いた。ボールの勢いが強まって、フルパワーシールドを破ると、勢い良くゴールに突き刺さったのだ。…そして、それと同時に試合終了のホイッスル。

「…か、った…?わたし達の、勝ち…」
「勝ったぞ円堂!地区大会優勝だ!」

現実味が無く、夢見心地でそう呟いたわたしの所に、皆が一斉に集まる。あちこちからぎゅうぎゅうと抱きつぶされているような感覚。その感覚で我に返る。―わたし達が、地区大会で優勝したんだ…!

***

「…優勝おめでとう」
「ありがと。良い試合だったよ、とっても楽しかった」
「…前半は思いっきり上の空のような感じだったがな」

フィールドの真ん中で鬼道くんと握手する。楽しげにくつくつと喉の奥で笑いながら彼はわたしを見てそう言った。…まさか、ばれていたとは…。

「…わたしにだってそういう時があります。人間なんだから」
「そうか?」

少しだけ膨れて見せれば、鬼道くんはまた楽しげに笑った。彼は影山さんがいなくなってしまったことによって、明るい、本来の自分を取り戻せたのかもしれない。

「次は全国大会かぁ…確か帝国は出られるんだよね?」
「ああ。前年度の優勝校だからな。…雷門への雪辱は、そのうち晴らすから覚悟しておけ」
「あはは、雷門も負けないよ!」

どちらからともなく、手を放す。わたしより先に背を向けた鬼道くんは、いつかのように手をひらひらと振って帝国のメンバーが残っている方へと歩き出した。
またな、なんて言う言葉をわたしへ残して。



 


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