土門くんが怪我によって退場になってしまった。当然だ、あのデスゾーンを顔にまともに食らってしまったのだから…プレー続行は不可能だろう。
担架に乗せられた土門くんが苦しそうな顔をしているのを情けない思いで見送る。雷門イレブンのベンチに沈黙が落ちた…その次の瞬間。

「…円堂!!」

豪炎寺くんの怒号に似た声が響いてきた。慌ててその声に答えようとして―目を見開く。
わたしの眼前には、豪炎寺が蹴ったボールが迫ってきていた。

「…っ…!!」
「円堂!!」

肩と首元の間に衝撃を感じたと思ったら、体に鈍い痛みが走る。気づけば、さっきまで立っていたはずだったのに、いつの間にか地面にうつ伏せになっていた。遠くで一郎太や染岡くんが何かを叫んでいるのが聞こえる。

「…う…豪炎寺、くん…」
「今のが…俺のサッカーへの情熱を全てかけたボールだ」

見上げた豪炎寺くんの顔は、怖いくらい真剣だった。思わず肩を竦めて、身を縮める。―こわい。
座り込んでいるわたしの目線に合わせるように豪炎寺くんが屈みこむ。そして今度はわたしの頭に手を置いて、指に髪を絡めるように撫でられた。
優しいけれど、厳しい声が近くで聞こえる。

「フィールドの外で何があろうと、ホイッスルがなれば試合に集中するんだ。…それがお前のサッカー、そうだろう?」

諭すように降ってくる言葉に、知らない内に無言で頷く。…豪炎寺くんの言う通りだ。

わたしは、迷わないと言いながら鬼道くん達の事、心の何処かで考えていた。危なく、自分の好きなサッカーに嘘を吐くところだった。

「…もう大丈夫だな?」
「…うん、もう大丈夫だよ」

そうか、と目を細めて頷く彼にありがとう、と呟けば、彼にしては珍しい勝ち気な笑みを浮かべて立ち上がった。そしてすっとわたしに手を差し伸べて、一言。

「勝ちに行くぞ、円堂!」
「…うん!」

―もう、迷わないよ、鬼道くん。全力で帝国にぶつかって…必ず、雷門が勝つ!

***

辺見くんのコーナーキックからボールは鬼道くんへ回り、佐久間くんとともに新たな必殺技、ツインブーストを繰り出してくる。こちら側も、新たな必殺技でそれを防ぐ。…豪炎寺くんに渇を入れられて、上手い具合に気分転換できたらしい。ボールをぶつけられたのは物凄く痛かったけれど、まあこれはこれで万事解決という所なのだろう。
その後はドラゴントルネードで1点追加。豪炎寺くん曰く、源田くんの必殺技、パワーシールドの弱点は薄さ。衝撃波の壁で出来ているため、遠距離から打ち込まれたボールには強くても、近距離から打ち込まれたボールには滅法弱いらしい。…さすが、豪炎寺くんと言ったところだろうか。
これで、1-1。恐らく、次に1点を取った方が…勝利を手にすることが出来るのだろう。



 


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