悪魔からの毒林檎で溺れるなら本望と嗤う


さんさんと照りつける太陽。青い空白い雲広い海。
日本とは違うカラッとした暑さ。
USAはテキサス州に、泥門デビルバッツのメンバーは降り立っていた。
NASAエイリアンズとの一戦を終えたその日に母国を退去しやってきたのがこの地であった。
何も考えずに”あの”ヒル魔がこんなところまで来るはずがない。悠里はそう考えながら太陽に眼を細めるヒル魔を眺めていた。

「……で、どうしてガンショップ」

アメリカに来たらまず行くところがあるだろうと、意気揚々とヒル魔がやってきたのはガンショップだった。セナとモン太も気になったのかついてきた様子である。
ヒル魔は相手を脅す一つのアイテムとして”銃”だったり”火器”を使用している。
しかし脅したり、大仰に見せるだけなら今あるだけでも十分であるように、悠里の目には見えていた。
おそらく、普通に趣味というのもあるのだろう。

「平和ボケした日本人にゃ、銃は無理だ」

下世話で下品な笑い声が耳に入ってきたと思えば、急に聞こえた銃声とガラスの割れる音。

「おー、これも買うぞ」
「せめて中に入ってから撃ってください」

癇に障ったのか、余興のつもりだったのか、笑っていた男たちの間をすり抜けるように放たれた弾丸は、的のど真ん中を撃ち抜いていた。
そしてそれに対抗するように的の前に立ちリボルバー式の拳銃を扱う男。

「西部ワイルドガンマンズ、キッド」
「ケケケ、流石だな。最強の血統書」
「今は名もなき路傍のキッドさ」

西部が合宿にアメリカ入りしていたのはヒル魔も悠里も情報として手に入れていた。とはいえ、こんな片田舎のガンショップで顔をあわせるとは微塵にも思っていなかったわけだが。

「テメーは扱えんのか?」

一通り吟味を終えたのか満足げなヒル魔が退屈そうに銃器を眺める悠里に声をかけた。

「まあ使えないことはないですけど。アメリカに住み続けていたなら真面目に覚えもしたでしょうが、今は日本で暮らしてますし、必要無いですからまったく触ってないですよ」
「ホレ、持ってみろよ」

そういって投げ渡された一つの銃。いわゆるハンドガンであった。

「SIG社のSAUER、P220シリーズのひとつだ」

素直に受け取った悠里は一通りそれを眺めると右手でグリップを握った。しっかりと握り込み、人差し指はグリップの上に乗せる。
左手でその右手を包み込みように握り込む。親指は同じくフレームの上で固定。
腕を伸ばして的を見据える。

「持ち方は悪くねえ。が、立ち方が問題だな」

そっと背後に立ったヒル魔は長い腕で悠里の体を支えた。

「肘が伸びきってる。少しだけ曲げろ、そう」

ヒル魔の骨ばった指が、悠里の肘関節に触れる。ヒル魔も悠里も着ているのは半袖。これだけ密着していれば否が応でも肌が触れ合う。

「少し前傾姿勢でいい。重心を前目に、押されても倒れない程度だ」

腕に触れていた指が肩へ、そして腰に回る。互いに下心はない。

「足の開き具合はそのままでいいから、膝を若干曲げておけ」

そこまで言うと漸くヒル魔は悠里から離れた。

「悪くねえな。買うか?」
「いや、いいです……」

飛行機の長旅よりも、今のこの瞬間に疲労を感じた悠里だった。








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