終焉に開いた幕、魔法の溶けたシンデレラ


週末の熱戦明けた月曜日。すべての授業を終えた悠里は階段を降りていた。
用事があるからと、同じクラスのセナはすでに部室に向かわせている。

「おう、来たな」

泥門高校では1年生が4階の教室となっているので、階段を降りれば自然と合流できるのだ。
合流したヒル魔と悠里は文化部の部室棟へと向かっていく。
扉の前に掲げられているのは、模型部という文字。

「出来てっか?」
「はっ、はいぃ」

そう言って屍と化した模型部部員から手渡されたのは、選手を模ったフィギュアだった。
ヒル魔が模型部に対して”頼み込み”その結果模型部が”快く”つくってくれた代物だ。

「よし、部室向かうぞ」

フィギュアの入ったダンボールを抱えて、ヒル魔と悠里は部室へと向かって歩き出した。

「トレーニングルームの予約は取れたか?」
「ヒル魔さんの名前を出したら簡単に取れましたよ」
「ケケケケケ」

この学校でヒル魔に怯える者は多い。
あまつさえ校長が脅されている現状なのだから致し方ない。
部室にはすでに人が集まっているようで、少し近づくと会話のようなものが聞こえてきた。

「全員集まってるようですね」

ダンボールを持っていたヒル魔は足で部室の扉を開くと、勝利祝いにと栗田が購入していた大量のケーキやお菓子が乗った机をひっくり返して見せた。

「ホワイトナイツ戦の作戦会議だ」

ひっくり返された机はリバーシブルになっており、無地だった机は見事にアメフトのフィールドが描かれたものに早変わりした。

「ケーキどけてからでもいいでしょ!どうしてそう身勝手なの!」

よく見ればあれだけ汚れていた部室が綺麗になっていた。
姉崎の手によって綺麗にされたようであった。
そんな姉崎の怒号もなんのその。ヒル魔は持ってきたフィギュアを机の上にばらまいた。

「おう、そのフェギュアをフィールドの中に並べろ」

一番ポピュラーな形でフィギュアを並べ終えると、ヒル魔はおもむろにアイシールド21を模したフィギュアを手に取った。
マグネット式になっているボールをアイシールド21にとりつけると、それを持って机の上を走らせた。

「こいつが、ぜーんぶ持って走る。以上だ」

模型部が徹夜して作り、今まさに綺麗に並べられたフィギュアはものの数秒でヒル魔の手によってなぎ倒されていった。

「でも、全部持っていくって、パスは全くなし?3rdダウンで残り10ヤードでも?」

栗田はアイシールド21のフィギュアを眺めながらヒル魔に問うた。

「どうせ誰も取れねえだろ」
「寧ろ無理なパスでインターセプトされる可能性もありますから、ランの方が現状有効的だと思いますよ」
「あの、3rdダウンって……?」

三人が繰り広げる会話についていけないセナが疑問符を投げる

「アメフトで攻撃側に一回あたり与えられている攻撃回数は計4プレー。その4プレーで10ヤード進むことができたら、また4回の攻撃権が与えられるの。3rdダウンはその3回目の攻撃ってこと」

まるで先生のように、セナに対してアメフトのルール説明を行う姉崎に栗田が感嘆の声を上げる。

「すごーい!」
「昨日ルールブックを読んで全部覚えたの」

そんな姉崎につっかかったのはヒル魔だった。

「一夜漬けで全部とか言ってりゃ世話ねーな」
「覚えました!」
「ほォ?じゃあ答えられないものがあったらどうする?」
「ありません」

意地になる姉崎にヒル魔はニタリと笑みを浮かべて口を開いた。

「じゃあ、上級問題3問出してやる。ひとつでも間違えたら二度と俺に逆らうな」
「えぇ、いいわよ。でもその代わり全問正解したらセナをいじめないって約束して!」

火花散る二人を横目に、悠里はセナを手招きした。

「栗田さん、セナと一緒にこっちはこっちでルール説明しましょう」
「そ、そうだね」

悠里はフィールドを模した机に改めてフィギュアを並べ直した。
10ヤードが何メートルだとか、問題が飛び交う中、アメフトの基礎ルールをセナに叩き込む。
その間、3問中2問を完璧に答えられてしまったヒル魔は適当に切り上げると、悠里が予約をしていたトレーニングルームへとメンバーを引き連れて向かっていった。






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