終焉に開いた幕、魔法の溶けたシンデレラ


アメリカンフットボールとは。
アメフトは格闘技に近い球技である。選手は防具、プロテクターを身につけ、ヘルメットを着用する。マウスピースを着用するケースも少なくない。

アメフトは攻守がはっきりと分かれている。
攻守共に相手の出方を伺いフォーメーションを組み、攻撃側の掛け声とボールスナップを合図に文字通り激しい攻防戦が繰り広げられる。
オフェンスは1ヤードでも前に、ディフェンスはオフェンスを阻みつつ、1ヤードでも後退させようとぶつかり合う、いわば、陣取り合戦。
それを1試合4クォーターで行う。

試合開始後、デビルバッツの攻撃は、ヒル魔の鋭いパスがフィールド内のディフェンスの間を掻い潜り炸裂する。
素人目にも、経験者から見ても高評価を受けるであろう見事なパス。だが他が寄せ集めの素人のためにパスキャッチもままならず、ゲインにも得点にもつながらない。

「凄くいいパスなのに」
「え?」

バインダーを左手に、ボールペンを右手にフィールドを見つめる悠里がぼそりと呟く。
隣でビデオカメラを構えるセナは、悠里の独り言がうまく聞き取れなかったのか、疑問符を口に出す。

「ううん、こっちの話」

寄せ集めとはいえ大体は運動部からの助っ人なので、動けていないというわけではないが、いかんせんアメフトというスポーツは特殊である。

両チーム無得点で迎えたハーフタイム。
悠里は作ったドリンクをそれぞれカップに注ぎ選手へと手渡した。
すると水分補給もそこそこに、ヒル魔は一点を見つめながらその苛立ちを隠すことなく持っていたカップを握りつぶした。カップは音を立ててその原型を崩し、中身も悲惨に飛び散った。

「クッソ……早く帰りやがれ!」
「ど、どうかしたんですか……?」

そんなヒル魔を見かねたのかセナはおずおずとヒル魔へと声をかけた。

「みえんだろアレ」
「あ!桜庭くんだ!」

指差した先にいたのはビデオカメラを持った桜庭春人。
しかしヒル魔はまた不機嫌そうに声を上げた。

「桜庭ァ?あんなんどうでもいいんだよ!隣だ!隣!!」
「進清十郎……」

桜庭春人の隣にいたのは進清十郎。
進清十郎も桜庭春人もまた、アメフトの強豪、王城ホワイトナイツの一員であった。

「そうだ。ホワイトナイツの進。高校最速にして最強のLB。ヤツは強すぎる、人間じゃねえ」
「う、うん……去年の練習試合で身にしみてるよ……」

どうやら泥門は昨年王城と練習試合を行っているようで、栗田はそれを思い出し冷や汗を流した。
そんななかアメフト初心者のセナはヒル魔の言葉に首を傾げていた。

「らいんばっかー?」
「ディフェンスのポジションの名称。走(ラン)もパスも両方止める守備の要のポジションを指す」
「ヤツだけには隠し球を見せたくねーんだ。対策練られちまうからな。進が帰ったらすぐ出すぞ」
「……な……なんか、とても勝手な計画が聞こえるのですが」

ヒル魔の相変わらずの傍若無人ぶりに誰もセナ以上のツッコミを入れることはなかった。
しかし現状両者無得点の膠着状態。この状態を脱することが出来たチームが勝者になるのは火を見るより明らかだった。
泥門にとってその切り札は言うまでもいなく、アイシールド21、セナなのだ。







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