珍しくカラッとした晴天の夏の日。
広い本丸の広い庭では、赤と青が木刀を持って対峙していた。
「鏡見てやってろって話だよなあ」
「だからこそ、隙とかが見えてくるんだけどね」
「手加減はしないぜ?」
「殺してやるよ! 子猫ちゃん!」
刹那、二つの木刀は切り結ぶ。
カンッと木刀同士がぶつかった音が響き渡る。
力はほぼ互角。そう悟った二振りは直ぐさま離れ間合いを取り、互いの出方を伺う。
清光は平晴眼。安定は脇構えにすり足でジリジリと距離を詰めていた。
「やっているね」
そっとその場に近づいてきたのは千里だった。手に持っていた盆には大きめの湯呑みが四つ。中には緑茶が入っており、氷が涼しげに浮かんでいる。
「仕事は終わったのかい、主」
「今日の分はほとんど」
「そうか」
「今日も暑いから飲むといい」
「ありがたく頂戴する」
二振りの様子をずっと眺めていた鶴丸は千里から茶を受け取り一口口に含んだ。
「二振りはどうです」
「さすがは実践刀、といった具合か。俺も弱いとは思っていないが、あの二振りとは御免だな」
「ははっ、そうですか」
清光の突きが安定の頬を掠める。
その突きを避けた安定は一歩踏み込み片手で持っていた木刀を振り上げる。
直ぐさまそれに反応した清光は体をひねりそれを受け止めた。
「チィッ」
「油断も隙もっないよねっ!」
この調子なら日暮れまで手合わせをしていてもおかしくない。そう判断した千里は立て掛けてあった木刀二本を手に、一瞬殺気を放つ。
刹那。
二振りの持つ木刀の軌道は一気に千里へと向き迫る。
安定の上段を右手で、清光の薙ぎ払いを左手で難なく受け止めると、千里は殺気を引き、笑った。
「お茶にしよう」
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