完全に陽が沈み月が丁度真上に上ったころ私はカカシさんのもとへと帰った。
『ただいまです』
「おそかったじゃない?なんか、あった?」
『いえ……久々にゆっくり回りたくて、里を』
「無理は…ダメだよ」
『!?……はい』
いつの間にか私の正面に立っていたカカシさんはまるで癖のように私の頭をポンポンと撫でると笑った。
「さ!ご飯にしよう」
『はいっ』
すごく、温かいと思った。
言葉では表せないほどにお世話になっていて、いつかこの恩を返せたらと思っているけれどなかなかうまくいかなくて。
『あったかい、』
「ん?」
『いえ』
極秘任務まではまだまだ時間がある。その間は、休暇なわけがない。
私は暗部総隊長。
休みなんてないんだ。
今日がアカデミー卒業試験らしい。対象人物が落ちた場合どうするのだろうか。
聞きに行くのが早いかと、私は火影のもとへと向かった。
そんな三代目のところに向かっている途中で聞いた、
『うずまきナルト』が試験に落ちたらしいと。
これは本格的にどうすればいいかを聞きにいかなければ。
『火影様』
「おぉ、夕理か。どうかしたのか?」
『警護対象であるうずまきナルトが卒業試験に落ちたと聞きますが?』
「そのようじゃの」
『どうするのですか?』
私がそう問いただせばうーんと悩ましげに腕を組む三代目。
「…少々厄介なことになってな」
『厄介なことですか?』
「そうじゃ」
『………』
「火影様!!」
火影の部屋へと飛び込んできたのは暗部のひとりだった。
「なんじゃ?」
「あの禁断の巻物をナルトが!!」
『……』
「夕理いけるかの?」
『は、ではこれで』
木の葉の里のみならず忍の隠れ里ともなると禁術などの重要機密の書かれた巻物が多く存在する。その一つをうずまきナルトが盗んだとのこと。といっても大方、あのミズキとかいうやつのせいだろう。前から情報は入っていたのだ。
今回は殺さずに生け捕りのようだ。
私は森のほうへと足を速めた。
気配を消し、森を突き進む。もう少し奥に気配を感じる。
気配の数は3つ。ミズキとナルトと誰だろうか。もう誰か暗部が到着したとでもいうのだろうか。
森の中の少しだけ開けた場所。そこの3つの姿はあった。
ナルトでもミズキでもないもうひとつの姿。それはうみの中忍だった。
アカデミーでナルトの担任を勤めていた人物だ。どうしてここに居るのかはわからないがとりあえずは様子を見ることにした。
黙って様子を見ていればミズキが例のアレをナルトへと言ってしまった。
うずまきナルトの中には、九尾という化物が潜んでいる。
これは木の葉の里の中でも箝口令が敷かれているものであり、ナルトと同年代である子供たちは知らないことだ。
皆が化物としてナルトを見る。存在を受け入れてもらえない。ナルトの過去は、こうして出来上がっていたのだ。
そしてミズキはナルトに向かって手裏剣を投げた。
しかし、
そんなナルトをうみの中忍がかばっていた。
『!!!』
そうか。うみの中忍は、ナルトを大切に思っていてくれているのか。
私は、その事実だけがただ、嬉しかった。
ナルトは膨大なチャクラを使い、影分身をした。影分身は高等忍術だ。分身とは違う、影があり本体と同じように行動のできる分身体。
ナルトはミズキを倒したのだった。
あとは私の仕事だろう。
私は二人の前に姿を現した。
「「!!?」」
『うみの中忍、うずまきナルト君。今回は貴方たちのおかげで謀反者のミズキをとらえることができました。協力ありがとうございました』
「だ、誰だってばよ!姉ちゃん!」
「ナルト、心配ない。この人は暗部の方だ。しかもだ、総隊長の夕理さんだとお見受けしますが」
『はい。私は夕理です。すみません、うみの中忍。あなたに怪我をさせてしまった』
「これはあなたのせいではありません!気になさらないでください」
『ありがとうございます。では私はミズキを連れ戻りますが……』
「私は大丈夫です。どうぞ行ってください」
『そうですか、無理はなさらないように』
私はミズキを抱えてその場を去ろうとしたが、あることを思い出して立ち止まった。
『あ、うみの中忍。渡してもいいかと思いますよ?私の意見ではですが』
「はい!」
『では、ナルト君、また会おう』
「お、おう!!」
きっとうみの中忍はナルトに渡すだろう。
木の葉の忍である証の、木の葉のマークの書かれた額あてを。
『……と、いうことです火影様。まぁ、水晶で見ていらしたと思いますが』
「あぁ…成長したのじゃな」
『私はあの子に可能性を感じました。きっと、いい忍びになる』
「そうじゃの」
『それでミズキなのですが』
「手配通りでいい」
『御意』
……うずまき…ナルトか。
きっと…
ううん、必ず、
いい忍びになる。
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