悲しみを拭うその手は、 | ナノ




「木登りィィー!?」


声を上げたのはナルトとサクラだ。


「そうだ」

「そんなことやって修業になんの?」


サクラが疑いの眼差しをカカシに向けていた。サクラもサスケもカカシをジッと見ている。


「まぁ話は最後まで聞け、ただの木登りじゃない!手を使わないで登る」


カカシは松葉杖で体を支えながら、両手をヒラッとして見せた。


「どうやって?」


サクラが疑いのまなざしのまま、カカシに問う。


「うーん、そうだな……。あ、カズハ!見本見せてやってよ」

『は?』


カカシがカズハの名を出した瞬間3人の視線がカズハに向いた。

当の本人はいきなり話を振られて不機嫌気味にカカシを睨みつける。


『なんで俺が……』

「だって、俺こんな状態だし?」

『だし?って……わかりましたよ』


動けないのは自業自得だろをブツブツ文句を言いながらもカズハは軽く印を結び木の方へと歩きだした。そのまま木に足をかけ垂直に木を登るカズハ。

もちろん手は使っていない。


「登ってる……」


ナルトが興奮気味に呟き、隣のサスケも興味深そうにカズハを見上げていた。


「足だけで垂直に……」


サクラも驚いた顔をして凝視している。


『よっと!これでいいのかー!カカシせんせー!』

「あぁ!」


カズハは手ごろな枝にぶら下がり下にいるカカシに声をかける。


「チャクラを足の裏に集めて木の幹に吸着させる、チャクラは上手く使えばあんなことも出来る」

『ちなみに再不斬が水の上に立っていたのもこれを使ったから。まぁ、木と水じゃあ物質が違うからチャクラ量は変わってくるけどな』


だが、木登りを見て余計分からなくなったのだろうサクラがまたカカシに噛みついた。


「ちょっと待って!木登りを覚えて何で強くなれるのよ!」

「ここからが本題。まぁ、聞け。この修業の目的はまず第1にチャクラの“調節"を身につけることだ」


カカシが続ける。


「練り上げたチャクラを必要な分だけ必要な箇所に、これが術を使うにあたって最も肝心なことであるのはさっきも言ったが、案外これが熟練の忍者でも難しい。この“木登り"において練り上げなくてはならないチャクラの量は極めて微妙。さらに足の裏はチャクラを集めるのに最も困難な部位とされている」

『その困難な部位にチャクラを必要な分だけ集めることが可能になれば、他の部分にだってできるようになるって寸法なわけ』


カズハの補足に相槌をうちながらカカシが続ける。


「第2の目的は足の裏に集めたチャクラを維持する“持続力"を身につけることだ…様々な術に応じてバランス良く“調節"されたチャクラをそのまま維持することは最も難しい」


3人もカカシを見つめる。


「その上忍者がチャクラを練るのは絶えず動き続けなくてはならない戦闘中がほとんどだ。そういう状況下チャクラの“調節"と“持続"はさらに困難を極める。だからこそ木に登りながらチャクラのノウハウを修得する修業をするってワケ!」


するとカカシはポケットに手を差し入れクナイを取り出した。


「……とまぁ、オレがごちゃごちゃ言ったところでどーこーなる訳でもなし……体で直接覚えてもらうしかないんだけど」


とりだしたクナイを3人のすぐそばの地面に突き刺す。


「今自分の力で登りきれる高さの所に目印としてそのクナイでキズを打て。そしてその次はその印よりさらに上に印を刻むよう心がける。お前らは初めから歩いて登るほどうまくはいかないから走って勢いにのりだんだんとならしていく……いいな!」


3人が頷いた。

こうして修行が始まった。



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